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怪しさ満載

 手術からそろそろⅠヶ月。発声のほうはまずまず上達している。とくに、ただ文章を棒読みするだけならほぼいける。あるいは海外もののドラマの字幕を追うのも大丈夫だ。しかし、人と話すとき、会話となるとそうスムースには行かない。これは練習が必要だな。幸い、シャント手術した人向けの電話サービスがあって、言語聴覚士が話し相手をしてくれるのがある。まだやったことはないが、だいぶ話せるようになったので、そろそろ始めてみようかと思っている。

 先日、泊まったホテルから忘れ物があるとの電話(留守電)があった。こういうのが困る。SMSで返したのだが返事がない。が、大事なものではないと思うのでまあいいかと。

 忘れ物といえば、ゴルフ場で終わって帰るときに、絶対にあるはずのスマホが見つからなくて、みなさんに大迷惑をかけてしまった。あきらめて帰る途中の車の中で「見つかりました」とゴルフ場からの連絡が入り、すぐ引き返して大事とはならなかったのでよかったのだが。こういうのも、みな同行者に代行してもらうしかない。ほんとに困ったものである。

 たとえ、もっとスムースに話せるようになったとしても、それは個人的な会話のレベルであって、さっきのような、ホテルに電話をするとか、何らかの交渉事とかについては人に頼むしかないだろうなと思う。それでも、このⅠ年半筆談のみだったのが、ほんの片言でも自分の意思を伝えることができるようになったことは大きいな。

 先日は珍しくも東豊氏からメール(ライン)があって、「怪しい本を出したので贈呈します」と来た。するとさっそく仕事場に届いていた。まあ確かに怪しい。「新しい家族の教科書」というタイトルで、「スピリチュアル家族システム査定法」との副題がつく。ほんとにもう、「スピリチュアル」への傾倒といい、祇園の舞妓遊びといい、僕なんかとは相容れないことばかり。別に僕が科学好きというわけではないが、彼と違うのは、僕はもっと即物的ということかなあ。

 で、パラパラと読んでみると、そのエッセンスは、昔飲んだときに話していたことだなあと思う。たとえば、最近彼が使うらしい「P循環」というのは、25年くらい前だったか、「菅野さん、最強の面接法を考えついた」と言っていたことが原型だなあ。なるほどそれはあるかもなあと思っていたが、ついぞ彼は発表しなかった。その辺実に慎重なんだよね。

 で、まあ、いろいろと言われもするのだろうが、本人が好きなやり方をするのがいちばんだと思う。この査定法を実際に使った人の言に「パラダイムシフトが起こった」とあるが、どのようなやり方であれ、クライエントの中にパラダイムシフトを起こせるかどうかが心理療法の肝であるのだから、それが成せているのならとりあえず何の問題もないのだ。そもそも心理療法とは怪しいものではある。

 昔、柄谷行人の話で、子どもが不登校になってカウンセリングを受け、そしてまた登校するようになったという。誰かが「治ってよかったですね」と言ったが,それに対して柄谷は「治るから嫌なんだ」と応えた。こういう仕事をする身としては、この発言はひじょうに気になった。彼と一度会う機会があったのだが、この発言の意味についてを聞き忘れた。

 たぶんだが、人間というのはよりブラックボックスであって欲しいということでないのかと思うのだが。で、僕としても、理路整然とした心理療法論は、それこそが「怪しい」と思うのである。

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