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左右のルール

 今日、地下鉄のエスカレーターに乗っていると、手すり脇に「右側の手すりを必要とする人もいます。ご配慮ください」という注意書きがあった。ほう、いったいどんな人なんだろうと考えてみたが、まったく思い浮かばない。まあ、右手しか使えない人ということならわかるが、それにしても右側じゃないとダメという人は、多く見積もっても1万人に1人くらい? 10万人に1人くらい? こっちだと僕の希少ガンの確率と同じだ。

 この件は機会があったら駅員さんに聞いてみよう。

いずれにせよ、微々たる数の人のためにこうした配慮がなされるというのはなかなかいいことだなと思う。

「エスカレーターで片側を空けているのは頭が悪い」などと言っている奴などには、こうした配慮は想像もつかないんだろうな。

 

 ところで、エスカレーターの左右問題、関西では左側を空けることは誰でも知っていることだ。僕などは関西に行くと、つい左側に立ってしまう。この違いこそ文化の違いというものだろう。ちなみに車が左側通行というのも、世界的にはマイナーだが、日本の武家文化から来ていると言われている。江戸時代、江戸には武家が多くいたので、刀がぶつからないように左側通行を慣習とした。有名な話だね。一方関西は商人文化。関西でエスカレーターは右に立つというのは、武家文化の影響があまりないことの証左とも言えそうだ。

 そして、東京には染まらんで、という大阪(や京都)のメンタリティもある。「マクド」が良い例だな。こうした東京への対抗意識は東京人からすればよくわからないが、韓国の日本に対する意識とひじょうに似ているなと思う。日本人に「韓国を好きか嫌いか」というアンケートをとると、半分以上は「どちらでもない」なのだそうだ。つまり、多くの人は「関心がない」というわけである。このような結果がまた隣国を激怒させることになるのだと思うが、さきほど僕が言ったように、東京の人間は大阪をとくに意識していないという関係ととっても似ているよね。

 でもそういう意識の持ち方っていうのはいいことあるのか? 韓国にしても大阪にしても、たとえば、ただの文化の違いであるのに、どちらが正しいかという話に発展しやすい。そういう問題じゃないのに,そういう問題にするのである。

 ケーブルテレビではときどき競馬の番組をやるが、その中で「武豊TV」というのがあって、レジェンド武豊の競馬にかんするトーク番組である。この間ゲストに来たのが、現役日本人騎手ではナンバーワンの川田将雅、女性騎手の記録を打ち破る新人今村聖奈だった。話は彼らの競馬学校時代、当時のライバルの話になった。武豊自身はすべてにおいてトップでライバルと言える存在はなかったらしい。

 一方、今村は同期の角田にいつも負けているので、何とかこれに勝ちたいと気負い込んでいたようだった。そして昨年のルーキーシーズンで計51勝、ライバルと目していた角田(36勝)の上をいっただけでなく、JRAの歴史上、新人として出色の成績をおさめた。角田に勝ちたい、あるいは男に負けてなるものかという負けん気がこうした結果を生んだということだろうか。まあしかし、普通の健全な意識ではある。

 そして、あのルメールも抑えて最多勝を獲った川田の話はさらに興味深かった。意外なことに川田は競馬学校時代にトップではなかった。競馬ファンにしてみたら、あの川田が? トップじゃない?と言う感じである。

 で、同期のトップはこれも意外なことに津村という生徒だった。どうしても津村に勝てない川田は、どうしたら勝てるかと教官に相談に行く。すると教官は手足の長さなどを理由に、おまえは絶対に津村には<騎乗>で勝てない、同じ土俵ではなく違うところでがんばれと応じる。つまり、学校時代は騎乗フォームの美しさや合理性などが問題となるので、体型がアドバンテージを持つわけである。津村168センチ、川田159センチ。

 内心は悔しかったであろう川田は、それでもこれを受け入れ努力したのであろう。川田は昨年143勝、一方津村は38勝である。年月を経て、2人の間にはとてつもない差がついてしまった。津村も良い騎手だとは思うが。

 とにかく、人でも国でも、おのおのの特性というものがあるということだな。川田騎手の話は、自分に合わないものを取り入れてもいいことないという教訓だろう。

 ちなみに、韓国が日本のシャインマスカットの苗を盗んで自国で栽培販売したという話が合っってもめていたけど、向こうで作っても美味くないらしいんだよね。栽培方法が悪いと言うこともあるだろうが、そもそも土壌や水、気候が合わなければダメなんだろう。そのへんは、去年読んだ本で一番面白かった「美食地質学入門」(文春文庫)が教えてくれる。 

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