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声出し禁止

 会話のトレーニングに入った頃は、予想以上の出来だったので甘く見たのだが、物事はそううまく運ばないものだ。喉への負荷が大きくなるためか、前よりも痰が出るようになった。しかし、これも慣れるまでのプロセスなのかとも思う。たぶんまだ声の出し方が下手くそだから余計に痰が出るのかもしれない。

 スポーツ選手のリハビリの話はよく聞くけど、ああいうのも第三者が思うよりずっと大変なんだろうな。彼らは若いけど、選手でいられる時間は短いからね。彼らの1年や2年という重みは、僕なんかの比ではない。

 でも、だからこそ必死でがんばることができるということか。世間一般、ほとんどの人にとっては、1年や2年なんて大したものじゃないと感じられているのかもしれない。たとえば、それは多くの人が大事なことを先延ばししてしまうことにも表れている。僕が思うに、物事を先延ばししてしまう人っていうのは、自分は長生きするものだという暗黙の前提があるからだ。いわゆる「生き急いでいる」人っていうのも見ていて痛いが、先延ばしばかりしている人も、逆にその人生は薄すぎるんじゃないかと心配になる。

 まあしかし、他人のことはどうでもよろしい。自分の場合は、残された時間は短いけれども焦ってもよくないという考えに基づいている。最初の気管孔の場合もそうだが、人工的なものが自分の身体の自然となるには時間がかかるのだ。今回の手術もまだ2ヶ月。それでも、確実に声は出るようになっているのは、練習の成果というよりも、声を出すための新たな孔とそこに設置されたシリコン製のチューブが多少身体になじんでいったほうが大きいと感じる。練習すればそれだけ成果が上がるというものでもない。早くもそれがわかったかな。それを端的に教えてくれるのが痰である。痰的だぁ。

 というわけで、多少のんびりとした面持ちで、僕のリハビリ生活はこれからも続く。

 僕が声を出せないでいる間、コロナによりほかの人たちも密を避けるとともに声出しが禁じられる場面が多かった。サッカー観戦、ライブとか。でも日本と違って、世界は我慢が利かないから、ヨーロッパのチャンピオンズリーグなどはすさまじい応援である。うるさくて不快になるほどだ。

 そんな中、アウェイのスポルディング(ポルトガル)がフランクフルトを3-0で撃破。CL初出場のスポルディング守田が2点に絡む活躍。劣勢だったスポルディングだが、守田のおかげで勝てたと言ってよい。一方、フランクフルトは、残り10分、敗戦処理的に長谷部を投入。長谷部は13年ぶりのCLなんですと。まことにすごい。

 まあ、CLもMBAも、屋外だからまだいいかとは思うが、こんなんではもはや予防しようもないなあと思う。その点、日本はまだいいほうだが、外国人観光客がちょっと目立ってきたかな。出入国も緩くなったみたいで。

 ライブなんかもまだ声を出しちゃいけないらしい。が、先日、矢沢永吉の50周年ライブツアーというのが始まって、その2日目。国立競技場には6万の観衆。サプライズゲストがなんとB’z!だと。これには声出し禁止のスタジアムにも絶叫が鳴り響き、その後も禁止ルールなど意味がなくなったらしい。まあ無理もない。このコラボのインパクトは日本の音楽史上でも一番ではないのか。

 このライブは今後関西圏でもあるようだが、次はどんなサプライズがあるのだろうか。矢沢もB’zも、別にファンではないのだが、楽しみだね。布袋あたりがいちばん無難なところか。吉田拓郎とか桑田佳祐なんかが出ると伝説になるが、そりゃないか。

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