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菅野所長のエッセイ:ちょっと古いが、シドニー五輪に学べ

 ああ、暑いし。気力は湧かないしで困ったものだ。ヨーロッパはもうバカンスの季節なのに、それより暑い日本が何でこんなにちゃんと働くんだろう。ちなみにバカンスとは語源が「空っぽ」という意味なのだそうだ。僕の場合、心は空っぽである。

 天気があまりよくなかったものの、札幌はやはり別天地である。そのまま行方不明にでもなりたかったが、そうもいかないので帰ってはきた。が、もはやツール・ド・フランスの勝敗は決したも同然で、総合はフルームの圧勝に終わるだろう。スカイのアシストも強力だし、誰も太刀打ちできない。去年の優勝者ニーバリも、フルームの落車事故のおかげだったということがよくわかる。弱ペダでいえば、スカイはツールの「箱根学園」、フルームは「御堂筋翔」と言えばおわかりだろうか。誰もわからんよね。解説してた片山右京が「スカイのアシストだけはやりたくない」と言っておった。
 とりあえず残されたアルプスの山岳ステージを楽しむことにするが、僕の心はすでにフランスを離れブエルタ・ア・エスパーニャに飛んでいる。

 ああ、そういえば、札幌の街も銀座と同じですぞ。中国語が多い。もともと北海道は台湾で人気があるのでどっちかはわからないが、日本の観光地はどこに行っても変わらなくなってきたな。上半期には900万人超の外国からの入国者数ということで、出国者数を上回ったという。ということは、輸出入的に黒字になるわけだが、これを全面的によいこととして観光に頼るようになるのもどうかと思う。鎌倉あたりは生活と観光の間で住民の悩みも深いと聞くし。あまりそういうことを当てにしないで、地道にやっていくほうが確かではないか。

 地道と言えば、新国立競技場の話。オリンピックなんかやらない方がいいのではないかと僕は主張していたのだが、それはやっぱり金がかかるからだ。前の競技場を改修すればそこそこかっこはついただろうし。すべてにおいて金のかからない五輪を目指せばいいのに、「おおすげえ!」と言われたい欲求からあんな競技場のデザインができてしまった。

 以前、オーストラリアで開かれたとき、野外の競技場はハエがものすごくいて、選手たちはしょっちゅう顔に群がるハエを手で払っていた。他国の選手は迷惑がっていたが、オーストラリア人にとってそれは誇りであった。なぜならオーストラリアでは当時農薬を使わない農業政策に切り替えていたからである。当時、それを知って、彼らの矜持というものに僕は痛く感動しましたね。2000年、シドニーだったな。それに比べ、これを機会に土建屋に儲けさせ、すこし経済を活性化させてみようかなんていうスケベ心だからね、日本は。だから、早くもこんな問題が起きちゃうんだ。

 日本では、そんなことより福祉や教育に回さないとね。少子化の問題がいっこうにおさまらず、ますます深刻になっていくのは金を使いどころをいつも間違っている政府に責任がある。
 
 先日、自分の子どもを生まれるそばから殺していた女が逮捕され、その実情はよくわからないが、歴史的に日本は子どもを大切にしないところがあることは確かだ。昔の貧村での間引きとか、子殺しは日本の伝統なんだよね。こういうことの大きな背景としては、子どもを産むと金がかかるとか、何かと大変なことがあるからだ。そうじゃなくて子どもを産むとこんなにいいことがあるよとしないと、こういう事件は止められないのではないかと(今までもあったが)思うね。

 そういう事情は外国だって同じで、貧困層にとって子どもは邪魔な存在となる。しかし、子どもを殺す伝統はないので、捨てたり、養子に出したりするわけだ。そこにあるのは個々の宗教的な戒律とともに、子どもは社会の宝だという社会的な意識もあるのだろうと思う。昔、18世紀頃だったか、パリの人口が数十万人だった頃、捨て子の数は5万人くらいいた。パリ周辺にはたくさんの捨子院があり、そこで育てられたのだ。かの国では、子どもというものが社会にとって大事であるかということがよくわかる。その伝統は今も強く生きていて、古くミッテラン時代の政策により、子を産む女性には厚遇な制度が設けられ、出生数は増加。フランスはシングルマザーがものすごく多いが、それは仕事と子育てを両立できる環境を国がつくっている証拠でもある。

 そういうことに金を回さないとほんとに国ってヤバいと思うのだが、強大な軍事力を持つことが国を強くすることだと盲信する人がのさばっている限りはまるでダメだということなのだ。

 ちなみにこうした原理は企業でも同じ。社員を大事にするというのは、それは優秀な社員を育てることなのであって、それこそが会社、組織を強くするために最も重要なのだが、ほとんどの経営者はそこがわからないようだ。はやく気づいてほしいものだが、企業への講演数など、僕の場合は地味すぎるのでなかなか普及しそうもない。

 

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