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新旧の善し悪し

 ビール4社のカルテル問題だが、随分昔にビールの値段がほとんど同じことにかんして、それはカルテルと言うよりもある種の規制や決まりがあるからだろうと思っていた。でもよく考えてみれば、日本酒とかウィスキーも各社でいろいろと値段が違う。ビールだけがほとんど同じというのは不都合だよね。でも、こんな明らかな事実に対してこれまで公取委が動いたことはないのは、見て見ぬふりをしてきたということなのか。

 そのへんはよく分からんけど、ビール会社がカルテルをつくる事情は分からなくはない。たとえば、先週トヨタ博物館に行って、トヨタ車とそのライバル車が並んで展示されているのを観たけど、似たようなコンセプトと価格帯でありながら、それでもお互いに差別化を図っていることが分かる。つまりみな自社の個性を押し出そうという努力と工夫をしている訳である。どんな業界でもそういうことだよね。

 これに比べてビールというのは、差別化を図ることがものすごく難しい商品ではないのかな。もちろん、昔からキリンはこうだとかアサヒはこうだとか、各社によって個性はあり、味もちょっとは違うのだが、はっきり言えばそう大差はない。これはブラインドテストをやればはっきりすることでもある。世界的な比較をすれば、各国でけっこう個性があり、差が出てくるけれども、国内ではあまり大した違いはないよね。昔から。

 カルテルの問題は自由競争という原則から離れることにあるのだが、味や喉ごし、色、泡などなど、こうも似かよったものばかりになれば、価格も同じようになるのも致し方ないのかもしれない。というよりも、こんなに同じような商品なのに価格が違うとなると、消費者のほうが混乱するだろう。というわけで、こういった商品にかんしては価格にかんする話し合いが行われてもいいんじゃないかと僕は思うのである。何てことを言うんだと思われるかもしれないが、カルテルの問題は裏で隠れて談合するからいけないのであって、財務省立ち会いの下、堂々と会議を開くようにすればいいんじゃないかと。ダメですかねえ。ちなみにビールの管轄省庁は財務省(国税局)なんですと。知らなかったなあ。

 こういった談合は昔ながらのやり方であり、センスと言える。新しい農水相となった簗和夫も、47歳とまだ若いのにきわめて旧いタイプの政治家ではあるな。さすが旧安倍派、さすが首相のお気に入りといったところか。厚顔な感じは、若くしてすでに古狸的な雰囲気。誰に近いかと言えば、麻生太郎かもしれない。若くしてこういう政治家が出てくる時代なのかと思った。ちょっと怖い。栃木の人はたまらんだろうね。

 ノーベル賞授与のそ合憲三(ワープロで出てこない)氏。こちらは昔ながらの学究タイプ。ノーベル賞を獲る人は皆そうだけど、こういう人を見ると嬉しくなる。僕が大学にいた頃、理学部にはノーベル賞候補みたいな人が何人かいたりしたが、理学部と文学部は学究タイプの人が多かったので、この人たちと接するのは気持ちが良かった。学問は昔ながらがいいかな。

 ところで、最近ガンを発見するための尿検査のコマーシャルをTVで観るのだが、これは以前大阪大学チームが発見した画期的な検査法だよね。まだノーベル賞じゃないのか。この発見がなぜ獲れないのだろうか?

 日曜日、トランペッター松井秀太郎のライブを観に行った。サントリーホール、今年これで2回目。今回は、カルテットで新アルバムからの曲がほとんどである。

 それがねえ。うーん、ドラムもピアノも上手いもんだから、フリージャズへの志向がとても強いんだな。演奏自体は悪くない。でも、前にも言ったように、松井のペットの良さは、モダンやフリーでは発揮されないと思うんだよね。日野晄正じゃないんだから。若いミュージシャンでありながら、50年代、60年代のバップやスウィングが向いてる、松井のペットはそういう希な音なのだ。こういうのばかりだと今後はあまり聴きたくはないかな。

 それにしてもサントリーホールの音響はほんとにすばらしい。最前列でドラムの前だからうるさいかと思ったが、そんなことはまったくなく、シンバルの音が心地よく感じるほどだった。グランドピアノも綺麗な音が出てたなあ。松井秀太朗以外もサントリーホールのライブは今後も行きたいなと思う。

 終了後、六本木で少し飲んで帰った。そこでどこのビールが美味いとかの話になった。海外のビールは個性がさまざまであるが、料理と同じく、やはり日本のビールがいちばん美味い。日本人がこだわって造るのだから当たり前という感じだ。それが結論。

 ただし、その国の気候や料理と合わせると、現地のビールが勝ることもある。昔中国に行ったときに、最初は向こうのビールをまずいまずいと言いながら飲んでいた。しかし、帰る頃になると、いやこれはこれでいいなと感じるようになった。あちらの料理の味、油の量や質に慣れていくうちに、現地のビールがそれに合うと理解していったのである。なるほどね、こういうこともあるのかと。ドイツ料理を食べればドイツのビールが、ベルギー料理ならベルギーのビールがいいなと思うこともあるのだろう。

 しかし、やはり絶対的な美味さというものもある。それを思ったのはケニアに行ったときだ。ガイドのケニア人は筋骨隆々のキクユ族出身。残念なことに名前は忘れてしまったが、アメリカの伝説的テレビドラマ「ルーツ」の主人公クンタ・キンテもキクユ族だったはずだ。

 彼はナイロビにある日本食レストランの親子丼は世界一美味しいと力説する日本びいきだった。フランス語、英語、スワヒリ語、キクユ語、そして日本語もちょっと話せる。ケニアで大学に行くと、語学は自然とこうなるらしい。で、彼はこうも言うのだ。日本のビールもすごく美味しいけど、ケニアのビールも負けてないと。本当かねと訝しんだ僕だが、あまりに豪語するのでだまされたと思って飲んでみた。するとほんとに美味い。日本以外の外国のどのビールよりも美味いではないか。そして日本のビールの美味さにも劣らない。コクという点では日本だけど、軽さがあって爽やかな感じは日本のよりも上である。まだ現地の料理なども経験していない、到着2日目のことだ。その名もタッカービール。レギュラーとプレミアがあったな。僕が飲んだのはプレミアだった。

 ドジャースに移籍してきたカイル・タッカーを見ると、このビールを思い出す。喉の手術以来、ビールはあまり飲めなくなったけれど、舌の記憶だけは消えないのである。

 

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