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危機は突然やってくる

 先週末に喉の具合がひじょうに悪くなった。原因は分からないのだが、過度の炎症を起こし、発熱、痛みと腫れがひどくなった。身体の防衛反応として痰が平時をはるかに越えて排出される。日曜日、尽きない痰の処理をしているうちに、真っ赤な血痰が出た。さすがにドキッとしたのだが、炎症で腫れた喉の外壁が破損したからだと、つまり外傷であるから特段な心配は要らないだろうと思った。案の定、月曜日の朝頃にはほとんど収まった。

 それにしても、全摘手術をしてからもうじき6年。シャント手術してから4年。これまでも喉が腫れ、痛んだり熱っぽくなったことは何回もあったけど、ここまでのことはない。すぐに病院に行きたかったが、あいにく土日で腫瘍外来はやっていない。6年前のちょうど今頃、ガンを発見してもらった練馬のクリニックも休診である。

 しかたないから、喉の痛みとか解熱剤を買いに行って、主治医のいる火曜まではやり過ごそうとなった。身体全体が痛いので、余っていた坐骨神経痛用の痛み止めも使うことにする。そうしていると日曜の夕方くらいには熱も腫れも少し収まってきた。でも、経験上、それ以上は良くならないことは分かっている。この状態はどうあっても抗生物質を飲まなければ収まらない。

 火曜日、身体はまだフラフラする。しかし、主治医に診てもらわねば、抗生物質をもらわねばと大学病院へタクシーで行く。すると、総合受付では、予約外の時間だから、咽喉科のほうに直接行けと言う。そこで、その通りにすると、窓口で状態を訊かれ、主治医に聞いてみますとなった。待っている間、電光掲示の予約板を見ると、この日、主治医はすごく患者が多いことが分かり、ちょっと嫌な予感がする。すると、案の定「**先生は今日は会えません」と言われた。

 えー、そうなの、そりゃ、忙しいのは分かるけどさ、この間の診療のとき、あれはまだ2週間前のことだが、次の来院日を確認しつつ、「何かあったら、その前に来ても良いですからね」と言ってたじゃない?

 子どもが親にこういうことされたら、生徒が教師にされたら、非行のきっかけになるよ。非行患者になっちゃうよ! 愛人がパトロンからこういうこと言われても、も含むかな。

 しかし、心の中で叫んでも虚しい。もういいや、さっさと帰って寝ようと思ったのだが、やっぱり多少動揺していたんだろうね、出口を間違ってしまって、タクシー乗り場に行くつもりがバス乗り場のほうに出てしまった。まあいいかとバスと電車に帰った。練馬で降りて、今度は件のクリニックに行く。そうしたら、平日の3時過ぎ、けっこう混んでるよね。大学病院と違い、年齢層が低い。

 でも大学よりも回転が速いようで、1時間くらいで診察室に通された。僕の前には10人くらいいたのになあ。医師は一人なのになあ。商売だから効率的なんだろうね。

 すると、医師を囲み、ほとんどすべてと思われるスタッフが待ち構えていた。なんだこりゃと思ったが、たぶん医師が6年前の画像を見せながら皆に説明をしてたんだろうなと察する。患者の年齢層が低いから、ガンの症例はそんなに多くはないのだろうし、僕のような悪性の喉頭ガンはさらに希有な事例だからな。「神経内分泌ガン」という10万人に1人のものだからみんな見ときなさい、といったところだろうか。

 話によると、僕が来たのは6年前の12月だった。簡単な問診後、マイクロカメラで喉奥を覗くと「こりゃひどい、真っ赤だね」と医師は発した。もちろん、そうだろう。そんな映像見たくもないぜ。とにかく、これであんたのやることは決まってるよね、分かってるよね? 

 ということですぐに処方が決まったのだが、最重要なのは「今回は、いちばんつよい抗生物質を出しますので」との言葉だった。そうそう、そういうこと。それさえ飲めばだいぶ良くなると思うんだよね。「で、3日分出しますから、金曜にまた来てください」となったわけである。今日は疲れたけど、良かった良かった。大学じゃなくて、最初からこっちに来てれば良かった。主治医に義理を通した自分がバカみたい。

 で、抗生物質を飲んだらやはり格段に良くなりました。全快とまではいかないけど、それは今日薬を追加してもらおうかなと思っている。

 しかし、もう6年近くになり、転移の危険もほぼなくなったりはしたのだが、こういうこともある。ずっと長い間前立腺の薬を2つ飲むだけの生活だったのに、この3日間、それに加えて6種、あわせて8つの薬を飲んでいる。そういうのは嫌だよねえ。まあ、手術したばかりの頃に比べれば、幸せな日々とも言えるのだが。

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