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菅野所長のエッセイ:決勝の前に

昔、高校サッカー界で大迫の名前を知らないものはいなかった。

「大迫半端ないって!」の名言が生まれた冬の大会はまさに大迫のためにあったようなものだった。しかし、その後、約10年を経て、ここまでの選手になろうとは当時誰が思っただろうか。鹿島でも代表でも、そこそこの活躍はしていたわけだが、どこかひ弱さは抜けず、中心にあるとは言い難かった。

しかし、アジア杯を観ていると、大迫がチームメイトの大きな信頼を得ているかがよくわかる。南野も堂安も、大迫にパスを送って走り込めば、自分にチャンスをくれることを確信してプレイしている。
かつてMFの中田や本田にもこうした面があったけれども、どうも大迫の存在はそうしたものとも違う。FWである大迫は誰よりも点を取るけれども、それは他の選手との有機的な関係の中で生まれる得点であり、あくまで全体の中の一人なのだ。だから、中田や本田のような存在感はない。しかし、こうした選手こそが日本のサッカーをたらしめるものであり、中田や本田よりも大迫が信頼されている理由ではないか。かつてオシムが考えたように、日本では突出した選手は要らないのだ。チームのために惜しまず攻守に貢献する、そんな攻撃陣が必要なのである。
幸い、日本では伝統的にそうしたFWが多い。代表的なのは岡崎、今なら武藤もそうだ。しかしながら大迫と違うのは、大迫は、シュートセンスもさることながら、DFを背負ってのポストプレイができる点である。ここを基点に、走り込むFWにボールをさばけるし、自分で勝負することもできる。ヘディングもいい。攻撃陣に上の世代がいなくなった現在、大迫さえいれば日本の得点のかたちができあがる。
とは言え、これはまだアジアレベルでの話。より巧みで屈強なヨーロッパや南米と対したときには、まだ駒は不足だ。遠藤に代わるボランチとして、今回は招集されなかったけれど、三竿の成長が待たれる。そしてまた大迫がいるときといないときの差が甚だしいのも問題だ。”大迫依存”にならないチームつくりは森保の重要課題だろう。案外これがいちばん難しいような気がする。

DF陣だが、もはや中心は完全にCB富安である。吉田の不安定さに比べて、その的確さは際立つ。イランのエースを完璧に封じたのは立派だった。まだ20歳。代表不動のCBとして君臨するだろうし、直にビッグクラブから声がかかるだろう。富安が所属するベルギーのシント・トロイデンは、遠藤もいて、もう一人のFW鎌田も代表に招集される噂がある。何でも、日本人がオーナーらしい。今後、多くの若手がこのチームで鍛えられて代表に上り詰めてくるだろう。ひじょうによいことだ。

そして、朗報なのは、イラン戦の同日、フランスではトゥルーズに移籍した昌子がリーグ戦でフル出場した。結果は0-0だったのでCBとして大過なく務めたのだろう。昌子が順調ならば、富安、昌子のCBコンビとなり、これは代表史上最強の最終ラインとなる。これが完備したときこそ、日本は世界レベルで戦えるだけ基礎ができあがるのではないかと思う。日本の課題は「決定力不足」なんかではなく、いつも守備だったのだ。サウジ戦では見事な守り方ができたね。
準決といえば「新アメリカンアイドル」では、ベスト3まで決定し、いよいよ最終日を迎える。2日に渡る拡大版だそうだ。残ったのは、女子大学生のマディ・ポピーと女子高生ギャビー・バレット、そして男子高校生、名前が出てこない。勝ってほしくないからだな。アメリカはカントリー人気が根強いので、こういうのが残っちゃうのだ。こいつよりはロック野郎のケイド・フェナーのほうがはるかにいいと思うのだが、視聴者投票なのでしかたない。僕が勝ってほしかったのはケイドだったのだが、残った中では音楽センス抜群のマディかな。これはキャロル・キングを彷彿とさせる。

まあ、ここまで来ると結果はどうでもいい。アジアカップも、カタールとの決勝になったが、サウジ戦やイラン戦ほどの意味はない。今後に向けて、代表が現在どういうレベルにあるのかがわかればいいのだが、それはもうわかったし。まあ楽しみにはしてるが。鍵となるのはボランチ。遠藤が負傷したようなので、代わるとすればたぶん塩谷だろう。塩谷が相手のチャンスを多くつぶせるようならいい試合になる。
それよりも、ポルトガルの中島翔哉の「カタールリーグ移籍」のほうがショッキングだ。金で買われるわけよね。ポルトガルリーグにいることの宿命だがね。

「アメリカンアイドル」も、決勝は毎回「宴の後」という感じで、産卵後の鮭みたいにスカスカである。豪華ゲストは楽しいけど。まあ、この番組の問題はデビュー後である。どんないいい歌手でもセンスのないアルバムをつくられちゃうから全然売れないことがほとんど。ケリー・クラークソン、キャリー・アンダーウッドの頃はよかったがね。先週はそのキャリー・アンダーウッドがゲストだったが、その圧倒的な歌には心底しびれた。今回の決勝は、そこまでの大物はいないな。

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