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空港の記憶

 飛行機に乗るときにはほんとに余裕をもって空港に行かなければならない。僕はだいたい1時間前には着くようにしているので、そんなに焦った経験はない。

 唯一、今日はいつもと違う行き方で行ってみようとかと思ったら、勝手が違っていて、これは間に合わないかもしれないと思ったときがあった。いつもはモノレールだが、電車で行こうと考えたのだ。時間に余裕もあるし。しかし、乗ったことがない路線なのでどうすれば空港に行けるのかがよくわからず、結局やっぱりモノレールで行こうと思い直し、浜松町へ向かった。時間は危ない。

 そうしたら、浜松町のモノレール改札にはそんな人のための自動チェックイン機があった。よしよし、ここでチェックインすれば、飛行機は多少は待ってくれるはずである。

 それでチケットを挿入したのだが,カードが戻ってきてしまうのである。何度やっても戻ってくる。こんなときに故障なのか? なんて無慈悲な。責任者出てこいと言いたいところだったが、それで時間を使っても無意味だ。ここはあきらめてモノレールに乗って少しでも速く空港に行ったほうが正解だろうと思った。そんなときでも僕は冷静なのである。 

 で、空港駅について降りたとき、ある事実に気づいた。電撃に撃たれたようだった。僕はいつもはJALを使うのだが、その日はANAだったのである。で、さっき浜松町ではJALのチェックイン機にANAのチケットを挿入していたのである。それでは何度やっても戻ってくるに決まっているではないか。なんてこった。まったく冷静ではなかったのだ。

 はたして、カウンターに行ってみると、「もう乗れません」と気の毒そうに言われた。虚しい。仕事は明日だからよかったが、次の便まで何時間も待ち、しかも沖縄までの飛行機代(高い!)を自腹で払うのは痛かったなあ。

 もうひとつひじょうに焦ったのは、これは40年以上前かな。屋久島に行くとき、鹿児島空港でキャンセル待ちをしていたときである。たぶんキャンセルのひとつかふたつはあると言われていたので、アナウンスを聞き逃すまいと緊張していたのだが、あの空港はひじょうに音響が悪く、アナウンスが聞き取りづらいのである。今は改善されたのだろうか? 

 で、もうほぼ離陸の時間なので、ダメ元でカウンターに訊きに行ったら、すぐに離陸しますから急いでくださいと言われた。アナウンスはしたのだろうが、やはり聞き取れなかったのである。で、CAが「こっちです、こっちです」と走る後ろを荷物を担いでついて行き、滑走路に出ると、100メートルくらい先にすでにプロペラを回している飛行機がある。今はなきYS11だ。

 息も絶え絶えながら、同じくゼイゼイ言っているCAに礼を述べてから飛行機に乗り込むと、乗客の視線が一斉にこっちに向かってきた。それは真っ白でとても冷たい。申し訳ないです。でも音響のせいです。分かってください。

 しかし、乗ってみるとYS11は狭い、小さい。こんなのが飛ぶのか? しまったと思って天運に祈った。が、何の心配もなく30分くらいで屋久島に着陸した。やはり初の国産飛行機YS11はすばらしかったのだ。よかったよかった。これに乗れないと次は明日になってしまうしな。

 2回とも最悪の事態は免れていたのだな。そして、鹿児島空港は音響は最悪だが、スタッフは親切だった。羽田の場合もすべての責は自分にある。

 こんなことを思い出したのも、先日、日本を旅行中の中国人が,日本のCAの献身ぶりを動画にアップして中国でバズったというニュースを見たからである。そこではやはり離陸寸前の飛行機に乗ってもらうために、CAが荷物(キャリーケース)を持ってくれて疾走するという動画がアップされていた。およそ1キロくらいは走ってくれたと言う。まあ日本人ならびっくりするほどのことでもないが、中国人としたら驚愕な出来事だろう。

 これを見た中国人の中には、視聴回数稼ぎのやらせだとか、何らかの裏があると疑う者もけっこういるらしい。日本を旅行したことのある中国人なら、「サービスの国」日本を知っているからこんな疑いは持たないだろうが、日本を知らない人がこんなふうに疑うのも無理はないと僕は思っている。

 僕が昔、中国に行ったときのこと。成田発北京行きの飛行機は何のアナウンスもなく飛び立ち、何のアナウンスもなく北京に着陸した。スチュワーデスは一度たりとも笑顔を見せなかった。いちど、彼女たちが中国の美味くないお菓子を乗客に配り始めたのだが、手渡しをするのは通路側の客だけで、奥の客には投げてよこした。

 上海のデパートでは、おつりのコインを投げて返されたこともあった。当時のこの国には「サービス」という概念がまったくなかったのである。いくら愛想をよくしても給料は一緒であるから、ただそこにいて時間を潰すことが最良の処し方なのである。だから店員を呼んでも、一度か二度は必ず聞こえないふりをする。三度目くらいになると、しようがねえなあという感じでこっちに来る。共産主義国家というのはこういうものかと実感した。これが約30年前のこと。天安門の1年後。

 もちろん、その後は商業的資本主義国家という感じになっていて、当時のようなレベルではないだろうが、こうした「伝統」というのはそう簡単に変わるものではない。外の世界を知らない中国人は、航空会社やCAがそんなことをするわけはないと思っているから、何か裏があると思うのである。無理もないよね。同じ東アジアであっても、日本と中国では正反対と言ってもいいからね。律令制度など、中国に倣ってきた日本だが、精神的な文化はほんとに違ってくるもんだ。韓国ともそうだけど。

 ということで、今週は北海道に行ったことを書く予定だったが、長くなったのでそれは来週に回そう。来週も旅の話だね。

 今週は牝馬GⅠヴィクトリアマイル。本命は②スターズオンアースで揺るぎないところか。相手は⑯ソダシ⑤スタニングローズ。次いで⑥ソングライン⑪ナミュール。②から4頭への3連単マルチ。②1着固定の3連単も。

実は北海道で牧場を見学してきたので、今週の競馬はいつもより見るのが楽しみである。

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