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歴史の上に

 今年はいろんなワールドカップがあって、それぞれ盛り上がってる。女子サッカーは決勝まで行けば国内でももう少し人気回復したかもしれないのが残念だった。来年オリンピックでやるしかないが、ちょっと難しいかなあ。

 案外盛り上がったのはバスケット男子。国内開催だったせいもあるが、八村抜きの弱体にもかかわらず、まずまず頑張った。まあ、観ていると、あまりにも安定さに欠けていて、ホームだったからオリンピックに行けたという印象である。五輪本番では、今のままでは1勝もあげられないのは確実だな。

 でも、やはりホーバス監督の手腕はよほどすごいものだ。女子で銀メダルを取ったときも驚いたが、今回のほうがより予想以上の成績を出したと言える。昔から男子はアジアでも2,3番手までだったからね。サッカーの話ばかりしているが、実は僕は高校途中までバスケットをやっていたのでこちらもある程度詳しい。今回活躍した河村、富永の22歳コンビなどは高校のインターハイやウィンターカップの頃もちゃんとチェックしている。河村は高校生の時からすでに代表に入ってもやれる逸材だったが、今回のW杯で世界に見つかってしまったようだ。現在、そのアジリティでもって、世界でもやれるポイントガードである。

 バスケットの根幹を成すのは、優秀なポイントガードとセンター、そしてシューターであり、この3要素が揃えばまずは強いチームと言える。日本でいえば、河村とあえて八村が該当する。八村は純粋なセンターとも言えないので「あえて」としたが、それでも日本でならばナンバーワンだ。しかし、八村が加入したとしても、他の戦力が弱いのでね。五輪ではとても勝てないと思うのだ。やっとアジアの枠を抜け出したばかり、男子バスケットが世界に互するようになるには果てしのない時間がかかるだろう。

 サッカーにしてもその途方もない時間の果てに今がある。今回のヨーロッパ遠征、ドイツのホームで、本気も本気のドイツを4-1で粉砕。返す刀でトルコを4-2。ドイツ戦から10人入れ替えた「2軍」だったけどね。ほんとうに強くなったものだ。日本代表が強いと本気で思ったのは初めてのことだ。今の力は実質的に世界のトップ10に入るだろう。

 TV「三菱ダイヤモンドサッカー」が始まったのは1968年。僕みたいに、そんな昔から弱い日本を見続けてきた者からすれば、ここまで来るのにほんとに果てしのない時間が過ぎた。阪神の優勝なんかよりもはるかな時間なのだ。男子バスケットもそういった端緒についたばかり。NBAに10人くらい行けるようになったら、世界を争うチームができるんだろうが、現在NBAで活躍する選手は、八村と渡辺だけだもんな。先は長そうだ。長谷部や遠藤のように、海外のチームでキャプテンになる選手が出てくるとか、そういう風になって初めて「国際」的なチームとなれる土台ができるということだろう。

 映画の世界もよくわからないよね。もう僕の眼の黒いうちは世界標準の日本映画など出てこないと思っていたところに「ドライブ・マイ・カー」が生まれた。その濱口竜介監督の新作「悪は存在しない」が先日ベネチア映画祭で銀獅子賞受賞。日本では来年公開ということだが楽しみでならない。

 以前ここでも書いたように、「ドライブ・マイ・カー」はアンゲロプロスのオマージュとして見て取れるところがある。そして、それよりも30年前になる北野武の「ソナチネ」は明らかにビクトル・エリセの影響がある。ある時代からの映画にはそれより前の映画の影響があり、礎としての映画の歴史がその底にある。

 何かが開花し、実をつけるには、その土壌が豊かでなければならない。そして、その豊かな土壌を自分のものにする知恵と力のある者が成功を収めるということだろう。

 

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