ご予約専用フリーダイヤル
0120-556-240

桜が散っても

 満開だった桜もあっという間に散ってしまい、次の季節を迎えようとしている。二重橋から永代橋までを貫く鍛冶橋通りに沿ってはツツジが植えられているのだが、ちょっとずつ赤紫の花を咲かせ始めている。この通りは銀杏並木でもあるのだが、今は草緑色の葉が生い茂り、その葉もまだ小さくて可愛い。

 こんなふうに、身近な草木にも心を動かされるのは、わりと精神状態がいい証拠である。たぶん高遠の桜の余韻がまだ自分の中に残っているからかもしれない。

 東北、北海道を除けば、すでに桜の季節を過ぎ、心なしか外国人の数も減ったような気がするが、桜を求めての訪日客が去年の2倍だったというので気のせいだけでもないのだろう。日本の桜はもはや世界のトップコンテンツである。来年は更に観光客が押し寄せてくるだろう。考えてみれば、もっと早くからそうなってもおかしくはないと思うのだが。

 そこで確認してみると、江戸や明治時代の日本旅行記を世に出したシュリーマンやイザベラ・バードが日本に来たのは、揃って6月だった。イザベラの二度目の訪日は10月。ヨーロッパからアジアに船で来るとなると、たぶん天候や海流の問題があるのかもしれないが、いずれも桜の季節とは無縁の季節である。

 シュリーマンの旅行記では、江戸に着いた彼ら一行は、愛宕山に登って江戸を見渡したとある。現在の港区にある愛宕山は標高26メートル。自然の山としては東京最高峰である。ここからは、芝浦、江戸湾、浜離宮、築地本願寺などが見渡せ、そのとき桜が咲き誇っていれば、何より得がたい体験としてそのことが記されていただろう。今もそうだが、江戸、東京には桜がとても多いのである。

 昔、鹿児島から来ていた人が「東京は桜がとても多いですね」と言うので、少し驚いたことがある。あるいは北海道から来た人が「こんな季節に桜が咲くのを観るのは生まれて初めてです」と挨拶し、そこにいた皆が感嘆したことがあった。

 へえ、そういうものなのかと思ったが、東京にいる人間にはそういうことがよくわからない。いや、それは東京だけのことではない。どこにいても、桜の咲く季節である年度末や年度初めというのは、移動することがひじょうに少ない。だから、われわれは皆、自分の暮らす地以外の桜がどうであるかをよく知らないままなのである。

 で、たまにそういう時期に東京以外に行ってみるとわかるのは、東京と違って咲いている場所が限られていることだ。確かに桜の名所はあるけれども、東京のように何十カ所とあるわけではない。

 これはわかりやすい理由がある。江戸時代の参勤交代では大名が江戸に来て半年暮らすわけだが、半年は領地に帰っていた。その代わりに妻や家族が人質として江戸に残った。その家族たちの心を慰めようと藩主たちは江戸の屋敷に桜を植えるようになり、これがひじょうに流行ったのである。当時の江戸には藩屋敷が400以上もあり、江戸の面積の3分の1を占めた。隅田川のように、もとより治水の目的で多くの川の堤には桜が並木のように植えられていたこともあり、江戸はたちまち桜だらけとなった。現在の桜の名所も多くは昔の藩屋敷だったわけである。たとえば、新宿御苑は内藤藩の屋敷だったことで有名で、このあたりの住所は内藤町という。

 来年は弘前の桜でも観に行こうか、それとも吉野か、高遠以外の日本三大桜にもひじょうな興味がわいてきたのだが、桜旅行は当たりか外れか、かなりの博打である。ただし、そういうことにやきもきするのも楽しさのひとつなのか。

 さて、博打といえば、先週の皐月賞。レース前のパドック映像を観ると、断然良い馬が2頭、目に映った。ジャスティンミラノとコスモキュランダ。このコラムの予想とは別に、この2頭からの馬単、三連複、三連単を追加。すると2頭が1,2着に入り、すべての馬券をゲット。予想通りの馬券も買わないといけないので、ちょっと少なめだったが、それでも十分に儲けました。ちなみに順調にいけば、ダービーもこの2頭でいけるでしょう。

最初に戻る