ご予約専用フリーダイヤル
0120-556-240

月面着陸

 今週のハイライトは電話したこと。お店に電話して予約を取ったんだ。「私は声が不自由なんですが大丈夫ですか?」から始まって、日にち、時間、人数などを伝え、向こうの質問に答えたりして何とか予約完了。先週、初めてタクシーの運転手に口頭で行き先を伝えたのも快挙だったが、今回はそれに並ぶべくもない。終わった後の気分が違った。やったーって感じ。

 普通からすればたかが電話と思われるかもしれないが、初めて月面に降り立ったような「大きな一歩」だなあと感じたね。ずっと引きこもっていた子が、数年ぶりに外に出たなんてときもこんな気分かもしれない。だってほんとに勇気が要るんだもの。通じなかったらどうしようとか、驚かせたり、気味悪がらせたりしたら申し訳ないなあとか。声が出せるようになってからは、この怖さがついて回っている。

 考えてみれば、声が出せなくなって、たとえばタクシーとかいろんな窓口でメモ帳に書いて見せることにはさして抵抗がなかった。たぶん、それしかやりようがないからと開き直ることができるからだ。電話などはハナから使えないアイテムだから脳裏にさえよぎらない。でも声が出せるようになって、葛藤が生じるのだ。もう口頭でやれるかもしれない、電話もかけられるかもしれない、しかしちゃんと伝わるのかどうか。でも、いつまでもメモやメールだけに頼っていてはいけないとか。「でも」、「しかし」の嵐。

 ひきこもりだって、出ようと思えば出られるから葛藤が起きる。不登校も行こうと思えば行けるから、だ。僕の場合は、できるだけ自力でやりたいから、できるところはやっていきたい。しかし、電話は一番の難関だったな。今回は僥倖というほかはない。もうこれで誰かに替わってもらうこともほぼなくなるのではないかな。1ヶ月前には、車の廃車を1人でやったけど、あのときは電話を使えなかった。これからは、まだ怖いけど、1人でやれることが増えるかな。レンタカーも窓口が忙しくない時間なら大丈夫な気がする。

 でも引きこもりとか不登校と比べるのも不当かも。確かに同じような勇気が要ることだと思うが、根本が違うかも。ガンになってからこっち、まあいろいろな気持ちが行き来したけど、そんなに不満な思いはしたことがない。「不便はあるが不満はない」と僕は言ったが、それというのも、このようになってしまったことを理不尽だとは思っていないからだ。病気だからね。しかたない。でも、世の中で家に引きこもったりしている人は、少なからずいろんな理不尽な思いを経験しているんではないかな。そういう人たちが、自分がどうすべきかを分かっていながら、なかなか前に進めないのは当たり前かなあと思わないではない。若い頃は僕もそうだったと思うし。

 凱旋門賞。やっぱり日本馬はダメでしたね。とくに今年はレース直前に豪雨という運の悪さ。馬場はびしょ濡れとなり、果敢に逃げたタイトルホルダーも直線で沈んだ。それでも日本馬では再先着だから、乾いた馬場なら面白かったんだがね。これで当面は期待馬は出てきそうにないかな。手術からそろそろ2年。転移もなさそうなので生き永らえたかもしれない僕だが、それでも日本の凱旋門賞制覇は生きている間には無理かもね。ワンピースは最終話までいけそうだけど。

最初に戻る