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旅立ち?の朝

 昨夜は寝付けなかったなあ。何だかいろんなことが頭に浮かんできて。あきらめて4時くらいから起きている。まあ、退院するからいいか。

 考えることの中心は来し方行く末なのだが、来し方はいいとして、今後のことだな。どれくらい話せるようになるのか、現時点でどれほどの段階なのか、そういうことがわからない。退院したら、発声教室に通わないとね。でも、コロナの第7波ということでちゃんとやっているのかどうか。自力でどれくらいのレベルにいけるものなのか。

 病院の選択についてはしかたないかな。

 実は、島根大学がシャント手術で名高いらしく、局所麻酔で15分で終わると言っている。日帰りでもいいが、念のため一泊してもらっているとのこと。これは相当自信があるんだなとわかる。こちらを選べば、交通費などを除けば数万円で済んだのではないか。

 数ヶ月前は、ここに行こうか迷ったのだが、まあいいかとこっちにした。それは結局、今回の手術は命にかかわるものではないから、その一点である。もしそうでなかったら執刀例の少ない病院は選ばないもんね。

 思い返せば、最初の手術にかんしても、医者が若くてちょっと不安だったのだが、病院全体のホスピタリティのよさが気に入ってこの病院に決めた。その判断は決して間違ってはいなかっただろう。

 もうひとつあった。この数日、発声練習のために、病院内の掲示板を片っ端から読んでいる(もちろんちゃんと読めない)と言ったが、壁に掛かっているのはそうした注意書きだけではない。どうも院長(先代かも)が好きらしく、絵が多く飾ってあるのだ。当然だが、とくに1階に。で、これの趣味がなかなかいいのである。最初の通院から、これには好印象を持ったね。

 僕も、TCCを始めるときに、部屋に廊下に、自分の好きな絵を飾るのが念願だった。所長の権力をゴリ押ししたのはこれだけではなかったかなあ。でも経費は使わずの自腹なんだから悪質でもないよね。自分の好きなことならそうしないと。 ごくまれに「これはリャドですね」と言う人もあり、そういうときはとても嬉しい。

 この病院の絵はたぶん自腹というのはありえないな。やっぱり、予算が潤沢なんだね。医療とカウンセリングの差を思い知らされる。僕の場合は、大学にいるときから何でも自腹という感覚でやっていたからね。貧乏だったから大変だったけど、そういうものだと思ってた。公務員とか会社員だったりしたら、違ってただろうがね。

 

  大学にいたときのことだが、大学の相談室で声帯を全摘した女子学生と面接していたことがあった。なぜだか、ここに入院するまで忘れていたんだよね。これは不思議だ。どういうことか?

 今ならそれが甲状腺の病気によるものなんだろうなとわかる。当時彼女は、相当程度の休学の後に、大学に復帰してきたところだったはずだ。今の僕のように、話すときには喉元に指を当てる。そこから出る声は、ガラガラな音だったが、何を言っているのはだいたいわかった。今の僕とは大違い。

 こんなふうになってしまって、これからの人生はどうなっていくのか、彼女はその不安を切々と訴えていた。まだ若くて、そういう病気、事情のこともよくわからない僕としては、ただただ聴くことくらいしかできなかったな。もう40年くらいは前のことなので鮮明には思い出せないが、まだ20歳くらいで喉摘者としての人生を歩むのはいかに大変なことだろうか。老齢の僕でさえこんな思いでいるのだから。でも確か僕の記憶では、これくらい話せるんだから、本人が思うよりも何とかなるんじゃないかとと思ったような気がする。

 でも自分のことになってわかるが、元の声とはまるで違うんでね。いくら上達しても、自由自在に話せるわけでもないし、自信など持てるものではないな。でも、それでもやっていかなければならないんだけど。

 ま、今日は土曜日。帰ったら、グリーンチャンネル観ながら新馬戦でも楽しもう。今はまだ7時だけど。

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