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菅野所長のエッセイ:あえて大阪擁護

何の兆しもないままにいつの間にか梅雨が明けてしまった。7月の初旬には、今年の梅雨は例年になく早く明けるかもしれないとの予想があったが、結果は例年になく遅い梅雨明けとなったな。いきなりの猛暑でマスクがつらい。しかし、首掛け式の扇風機で絶えず喉元あたりに風を当てていると多少は和らぐ。買っておいてよかった。
さて、この間の4連休から2週間後、当初危ぶまれたオーバーシュート(感染爆発)が起きるかもしれないわけだが、そんな中、大阪の吉村知事がうがい薬で「コロナに打ち勝てるかも」と言ってしまった。この根拠になったのが、またしても行政の医師の「研究」である。松井市長とともに、記者会見にも同席していたな。
困ったものではある。サンプル数41人というのがちょっとねえ。せめて、実験群「うがい薬でうがいをした人」統制群「ふつうの水でうがいをした人」で100人ずつは欲しいよね。それから、もうひとつの統制群として、「うがいをしなかった人」も100人欲しい。それから「ふつうの水」というのが水道水であるとすれば、水道水には塩素が入っているから、これには多少の殺菌効果があるので統制群としては不適当なのである。
したがって、正しい実験としては、そこそこのサンプルを使って、「うがい薬でうがい群」「ナチュラルウオーターでうがい群」「うがいしなかった群」の結果を比較することだろう。こんなことは実験や統計をやる者にとっては常識であるからして、すぐさまに専門家が批判したのもうなづける。だから行政の医官はダメなのよね。こういう結果で鬼の首を取ったように舞い上がっていた吉村知事もいただけない。いつも必死すぎてるのが見てて痛かったが、ちょっと功名心が強すぎるのかもね。

ただし、これに批判するばかりの専門家連中もどうかと思う。だって今までコロナウィルスにかんして「うがい」に言及した専門家は一人もいなかったもの。自分たちはそういうところに目をつけなかったということで、ひがみもあるんじゃないの? たとえば、何ヶ月も前から、家庭内での感染、飲食の危険がコロナ感染の肝だと僕は主張してきたが、それが認識されたのもごく最近だもんね。たぶん経済学と一緒で、マクロの感染学の視点しか持っていないのだろうな。身近なことに考えが及ばない。
若干の大阪擁護を続けよう。
サンプル数に問題のある大阪の実験ではあるが、「うがい薬でうがい」が「水でうがい」よりもウィルスの数が減ったのは統計的に有意であるように見えるのは確かだ。しかも、「水でうがい」群だけを取っても、徐々にウィル数が減少したのも見て取れる。すなわち、口腔内のウィルスを減少させるにはうがいは効果があるという仮説が立ってもいい。それを証明するためにも「うがいをしなかった」群が欲しいわけである。
もし効果があるとすれば、日常的にうがいをする、人との飲食、会話の前には丁寧にうがいをすること、その最中にもトイレに立つようにうがいをしてくること、マスク以外に感染拡大を予防する簡単な手立てとして「うがい」が認識されるのはいいことだと思うね。 だって、特別な成分が入らないうがいなら誰にも害は及ばないし、口内のウィルスを流し出すことは、実験をするまでもなく、ほぼ確実だからだ。たとえば、室外、野外の場合、いろんなところに飛散し、付着したウィルスのほぼ100%は雨が流してくれているわけよ。

もちろん、うがいがコロナを絶滅させるわけではまったくない。けれども、ある程度の社会生活を送りつつ感染を拡大させないという、政治の無策によって難しいミッションを背負わされているわれわれにとっては、これは淡い光明ではなかろうか。

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