菅野所長のエッセイ:氷上の母

 フィギアスケート安藤美姫が、とりあえずだがシングルマザーとなったのには多少衝撃があった。キムヨナはもちろん、浅田真央にも勝てなかったのは、スケート以外のことに気を奪われてばかりだったからだろうと思ってたが、一説によれば彼女は天才型で、それゆえにあまり努力もしないでやってきたのだそうだ。なるほどねと、納得。

 で、そのまま引退かと思ってたところ、母になり、そしてソチを目指すと宣言したのである。これに対して、オリンピックはそんなに甘いものじゃないとか、プロ意識が足りないとかの声が上がるんだそうだが、誹謗中傷も数多いと聞く。あいかわらず、他人の人生にけちをつけたがるバカな閑人が多い。シングルマザーに対する嫌悪か? いったい何世紀の人間なのだ?
 いいじゃないの、シングルマザーとしてオリンピックに行こうだなんて、そんな選手は日本にいなかった。いわば常識破り。常識にとらわれている人間には抵抗感があるんだろう。これまで好きじゃなかったが、かなり見直しましたね、今のところ。僕もたいがい常識ないもんで。父親が誰かなんてどうでもいいしね。

 実は僕は、男の癖に、シングルマザーというのに憧れてるのである。誰よりも面白い人生を生きられると思っている。ま、ロシアのように離婚率60%超なんて国では面白くもないのだろうが、日本のような国ならね。そんなこと言うのは母親の苦労がわかってないからとか言う人もいるのだが、わかってないなあ。いろいろ苦労するから面白いの。何の苦労もないほどつまらないものはないわけでね。そういうわけで、安藤美姫にはずっとシングルマザーであって欲しい。

 そもそも、行きたいと言っていけるものじゃなくて、そのまえに大会などで勝たなくちゃいけないんだからね。そこで勝てば文句ないわけよ。で、相手は浅田真央でしょ。勝ち目がないわけじゃない。浅田真央はいくつになっても大人になれないので、いっこうに選手として伸びない。一方、男に依存してきた頃の安藤もダメだったが、いまはたぶんちょっと違うんでしょう。これは見物だ。突如異端の存在となって、お子ちゃまたちのスケート界に殴り込むと。ま、負けても、その後食っていく保険になりそうだし。

 で、同じような常識破りをしているのが、日ハムの大谷クン。投手、野手の二刀流で行くとしてプロ入りしたわけだが、ほとんどの解説者が、やめたほうがいい、プロはそんなに甘くないとか言って非難する。あんたたちの狭い了見で人を測らないほうがいいよ、と言いたいね。
 だいたい、日ハムの監督に栗山が就任したときだって、「指導者の経験がない人間には無理だ」と言ってたわけよ、この人たちは。ひがみ丸出しで。でも、日ハムはすぐ優勝したもんね。ダルビッシュがいなくなってもがんばってるし、中田があそこまで成長できたのも栗山のおかげでしょう。現役時代は大した選手じゃなかったし、今もさほどの監督とも思わないが、それでもこれまでのような監督たちよりはマシだったということだ。何という甘い世界なんだろうか。選手以外は。で、大谷クンにはぜひ二刀流で行けるところまで行って欲しい。できるならば常識を打ち破って欲しい。

 そういう常識外の存在というのが大好きである。カウンセリングの世界も、そういう常識、つまりは共同幻想というのがあって、そういうものとの闘いだったな。昔と比べれば多少はマシになったとは思うが、しかし、徐々にまたつまらない考え方が支配的になっている感じもする。まあ、そういうのが世の習いというやつか。しかし、ときに異形の者が現れて、何かを変えてしまうと。そんなシーンに出くわすのが楽しみなのである。

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