菅野所長のエッセイ:公開就活-未必?の戦略-

 連載原稿についてメールがあり、「2月にもらったのと同じでした」とあった。実はよくあるミスなのである。忙しいときとかは、セーブする時に数字を打ち間違えててしまうことがあるようなのだ。しかし、だからといって問題はない。その月の原稿を探し出してすぐに送ればいいだけの話である。したがって、こいつは誤魔化そうとしているんじゃないか、とかは思われない、たぶん。

 水曜、注目の会見を興味深く見た。生中継では見られないが、帰宅後に各局のニュースをじっくり、その後、夜中に少し目が覚めたら仕事のアイデアが浮かんだので、それをメモるために起き出した。それが終わったら朝方の4時。また眠ればいいのにまたもや各局ニュースやワイドショーを3,4時間念入りにサーフィンしてしまった。

 結論、したたかである。
というか、もはやあれしかないということだろうな、選択肢として。したたかになるしかない。STAP細胞が「ない」と言ってしまったらすべてが終わる。「ある」と言い通す他はない。

 最初はオロオロとし、反省してますの態度とその証の涙でもって、見ている人の情緒に訴える。都合の悪い質問には答えず、はぐらかしているうちに、だんだん視線も定まって来て、眼力さえ感じられた。最初と最後で何でこんなに違うのかなあと思って、ちょっとびっくりもしたのだが、これはつまり本人が途中から手応えを感じたからだろう。何の手応え? それが肝。

 僕が思うに、彼女にとって、STAP細胞があるかどうかは現時点ではもはや問題ではない。彼女にとって問題なのは、「あるかもしれない」と思う人がどれほどいるかということだ。

 なぜか、そう思う人の中に、研究者や研究所(企業で何でもいい)がいれば、「うちでやってみない?」という声がかかるかもしれないからだ。だから、「ある」と断言し、200回(!)作製したと言い、「コツ」があると言い、第三者も成功したと言うわけである。もしそれが本当なら、そもそもこんな問題にはなっていないわけで、少なくとも彼女の実験においては「ない」のは明白なのだが。しかし、あるなしはどうでもいいことなのだ。とにもかくにも撒き餌をばらまくこと、それがこの会見の目的となった。未必かもしれないけど。

 彼女は理研に戻れるなどとはこれぽちも思っていない。さすがに戻りたいとは一言も言わなかったよね? そうならどうするか。新たな仕事場、働き口を見つけるしかない。つまり就職活動。それを大々的にやる機会としたわけね。35万円くらいどうってことない。

 彼女の頭の中は自分の名誉とか何とかじゃなくて、それしかないと思うよ。だって30歳、人生これから長いもの。どうやって生活していくのかが何よりも大事だもの。それについては大変だと思う。普通のOLになるわけにもいかんだろうし、やっぱり自分の得意分野でやりたいだろうし。これまでのことは何だったんだろうと思いたくないし。

 アンケートなどを見ても、「ある」という人もいたりするので、「あるかもしれない」と考える人はかなりいるからね。テレビで解説する人たちが一様に歯切れが悪いのは、もしかしたら「あるかもしれない」とミクロの単位で思っているからだろう。で、さっき言ったように、本当にあるのかではなく、「あるかもしれない」が肝で、その一条の光を残すことで彼女にもまだ希望が残ると。
 これは、どこかに埋蔵金があるとか、宝を積んだ船が沈んでいるとかと同じレベルにすぎないだろう。だけど、われわれはついつい可能性という魔力に惹かれる。僕にしたって「来るかもしれない」と思いつつ、来そうもない馬券を買ってしまったりするわけでね。それは人に希望や目的を与えもするが、危険と言えば危険なことでもある。

 何よりも小保方さん自身が、「あるかもしれない」に魅入られて森の奥に入ってしまい、迷子になったような人なのだ。出発点はそれでいいけど、秘境に分け入るだけの実力も知識も全然足りなかったわけです。埋蔵金とか宝探しにとりつかれた人が一生それを捨てられないように、彼女も同じような道をたどるのかもしれない。しかし、もし発見したらえらいことだと考えるスポンサーさえいれば、向こう5年くらいは生活が保障されるだろう。それも別にいいよね。世界の多くのトレジャーハンターも道楽者のスポンサーがあってやっていられる。結果はともかく、一攫千金の夢と利害が一致するわけでね。だから、そういうスポンサーが出てきても驚きはしない。

 彼女がこの先どうなろうがそれには関心がない。何より深刻と思うのは、理研という特定法人になりかかっていた機関でさえ、こうした”研究者”がいるということであって、それも多分確実に増えているだろうということだ。こんな人政治家にしちゃまずいでしょって人がほとんどの日本の政界だが、その分民間の企業とか官僚とかは優秀だし、国民はみな給料以上の仕事をこなす働き者で、この国は何とかなってきた。研究の世界でも、山中さんを始め優秀な人を輩出してきた。その日本の生産性を担う根幹にシロアリが発生してきたことが心配なのである。

 さて、僕の「あるかもしれない」は別に誰に迷惑をかけるものでもない。クラシック第一弾、日曜日の桜花賞。⑱ハープスターはブエナビスタ級かそれ以上。しかし、追い込み脚質。内に包まれたりしたら、届かないことも「あるかもしれない」。僕としては馬体を見てずっと気に入っている⑬アドマイヤビジン、たぶん6番人気以下? これが3着以内に入れば喜ばしい結末になるのだが。⑬ー⑱の三連複が本線ね。

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