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碧の奇跡

 先日、朝起きると身体がとてもだるい。前夜までは何ともなかったのにと思いつつ、静養していると昼頃にはだいぶ良くなった。で、いろいろと考えてみると、これは熱中症というか、脱水症状ではないのかと考えた。

 季節はいつであれ、人間は寝ている間にかなりの汗をかくというのは常識である。で、最近の猛暑であれば尚更だろう。でも寝る前というのは、トイレのことを気にしたりするので水分を摂らないのが習慣となっている。たぶんそれがいけないのではないか。ということで、以降寝る前にごくごくと水分を補給することにした。今のところ、この間のようなことはないので、悪い判断ではなかったのではないか。

 こんなふうに原因を考察できるうちはまだもうろくしているとも言えないのかもしれない。もっと年を取ると、何がどうなっているのか訳も分からず、対策も何も思いつかなくなるのだろう。

 先週は、横断歩道を渡って歩道を歩き始めたとき、ある老人が自転車で僕に正面衝突してきた。スピードはなかったので咄嗟に手で防いだが、悪くしている左足に負荷がかかり、再度痛めてしまった。老人は平謝りしたのだが、そのとき「よそ見しちゃって」と発した。え? ここは歩道で人がそこそこ歩いているのに、よそ見? 何でそうなるの?と憤りを覚えたのだが、その答えはひとつ、「年寄りだから」である。やがて自分もこういうふうになるのだろうが、自転車も車もできるだけ乗らないほうがいいよね。

 こうやって人が衰えていく一方で、若い人の活躍がまぶしい。まぶしすぎる。

 今年ルーキーイヤーの山下美夢有が全英女子オープンに優勝した次々週、同じくルーキーの岩井ツインズ姉、岩井明恵がアメリカツアー初優勝である。妹の千怜も春に優勝しているので、LPGAツアー4組目の姉妹優勝となった。しかも双子は初である。この二人、インタビューでも通訳を介さず、がんばって英語で応えているのがいいよね。これまた渋野なんかとは心構えからして違ってるし。

 今季すでに5人が優勝。メジャーが二つ。アメリカ女子ツアーは、小さな日本女子選手の独壇場となっている感がある。

 と、女子ゴルフも楽しいのだが、今週は何と言っても、プレミアリーグ開幕戦、リーズ所属田中碧の大活躍に尽きるのではないか。ゴルフも野球もやっぱりマイナーなスポーツだもんね。サッカーこそが世界一のスポーツであるからして。

 去年は2部だったリーズ、今年1部に昇格したのも田中のおかげだった。新入団から数ヶ月して、リーズはすっかり田中中心のチームになっていったのである。

 しかしながら、名門チームとはいえ2部である。レベル的にはJリーグくらい。日本代表ならその中心選手になるのは当たり前である。問題はプレミアに昇格したとき、世界最高峰と言われるリーグでどれくらいやれるのか? だった。先日のエバートン戦で、田中碧はとりあえず答えを出して見せた。

 あの細い身体のどこにそんなスタミナがあるのか、と思うくらい走りまくる。ピッチのあらゆるところに出没する。相手の攻撃を未然に防ぎ、丁寧で正確なパスを供給し続ける。去年の試合を通しても、かつての川崎でのプレイを観ても、代表でのパフォーマンスと比較しても、ここまではできていなかった。プレミアの開幕戦を細身の細身の日本人が席巻したのだから驚きである。何か奇跡のようなものを見た気がした。

 夢に見たプレミア昇格に際して、田中はさらにトレーニングを積んだのだろう。そして、これこそがオシムさんが日本代表に要求していたサッカーである。いわゆる「水を運ぶ」役割。今の田中は日本サッカーのあり方を示す象徴である。一言で言えばチームへの「献身」。こういう選手が一人いるだけでありがたいんだよね。会社なんかでもそうだよね。つまりは、サッカーばかりでなく、「日本」と日本人の良いところを示しているのである。

 リーズは昇格初戦を勝利する。PKによる得点は誤審とも言えるものなので、ラッキーな勝利ではあった。次の相手は強豪アーセナルである。はたして田中がどれほどやれるか、ここが試金石なのだが、僕の考えでは田中個人は十分にやれるのではないか。走ることにスランプはないしね。しかし、チーム全体となるとエバートン戦とは訳が違う。田中の孤軍奮闘に終わる可能性も高い。

 まあしかし、田中碧の台頭は代表にとって頼もしい。日本代表はすごい勢いで歴代最強を更新している。課題はワントップとセンターバック。でも、バックスに渡辺剛も名乗りを上げそうだし、だいぶ層が厚くなってきた。となると、FWだよね。いつまで経っても上田が突き抜けない現状、ボルシアに電撃移籍した町野あたりのほうが面白いのではないか。あるいは新しい風が吹かないものか。

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