ご予約専用フリーダイヤル
0120-556-240

夏とうなぎ、そして蚕

 なんだかんだで、W杯もいよいよ決勝を残すのみとなった。寂しい。スペイン対アルゼンチン。まあ、スペインが強いんだろうけど、アルゼンチンの粘り強さも侮れないなあ。エジプト戦、イングランド戦の逆転劇は確かにすごい。

 でも、アルゼンチンは何より予選からクジ運に恵まれてるからね。まるで仕組まれてるかのようだったし。その分ダメージが少ないとも言える。実際は辛勝ばかり続くけど。

 一方、スペインはあのフランスに完勝するんだからなあ。4年前とはまるで違うチームのようだ。準決勝の試合では、フランスのサッカーが一時代古いかのように見えてしまったね。W杯の歴史の中でも最も完成度が高いチームではないのか。

 トランプの介入問題について、IOCが調査に乗り出すとのこと。FIFAじゃなくて? つまりは自浄能力がないということだが、次のW杯は64カ国にするとか言ってるし、完全に拝金主義に陥っているのだな。それは元からか。今回48カ国に増やしたてみたら、馬鹿馬鹿しい試合がたくさん増えた。64なんかにしたら、つまらない試合ばかりでなく、怪我人も増えてしまうだろうね。

 それにしても、東京も今日あたりは本格的な猛暑である。今年の梅雨は、入りが遅く、明けが早いという感じで、つまりは期間が短い。となると水不足が心配になるのが普通だが、けっこう集中的な豪雨もあったせいか、利根水系と荒川水系の貯水率はなかなかいいようだ。それと比べて、多摩水系はあまりよくないけど、深刻な水不足になるようなことはなさそうである。

 夏と言えばうなぎ、と言う場合がある。今月19日は土用の丑の日。江戸時代、この日にうなぎを食べる習慣をつくったのは平賀源内であるけれども、確かに暑い季節うなぎのような滋養あふれるものを食べるのは理にかなっているのだろう。夏とうなぎとの結びつきは、江戸時代に始まるものでもない。その遙か昔、万葉集には、夏痩せにはうなぎを食べるのがいいぞと、痩せた友人をからかっているかのような歌が載っている。作者は万葉集の編者とも言われる大友家持である。

 栄養分析などもない時代、人々は食した経験や食材の印象などから、それが身体に良いことを認識していたのだろう。うなぎは蛇のような見た目もあって、蛇と同じように生命力あふれるものとして認識されていたことだろう。

 僕は昔はそんなに好きでもなかったのだが、ひつまぶしの美味さを知ってからは大好物になった。以来、いい店で食べれば確実にうまいことも分かったしね。

 僕が一番好きなのは、有楽町のマロニエゲートに入っている「備長」の白焼きだな。もちろん、全国にはたくさんうなぎの名店があって、それ以上のところもあるんだろうが、一個人が知り得る店の数なんてものには限度がある。いまのところ僕は「備長」がいちばんなのである。名古屋が本店のこの店は東京にも何カ所かあるけれども、池袋店よりも有楽町のほうが美味い。ちなみに、ひつまぶしの元祖という名古屋の蓬莱軒は、評判ほど美味くはなかったな。「備長」の勝ちだと僕は思った。関西の友人が言うには、三重にはうなぎの名店が数多いらしいが、まだ行ったことがない。9月、アジア大会の陸上を観に名古屋に行くのだが、名古屋、三重、浜松のいずれかでうなぎを食べたいと思っている。想定外だったのは、このアジアスポーツ大会がなかなかの人気で、チケットが思い通りに予約できなかったことなのだが。

 うなぎの養殖と言えば浜名湖である。天然と養殖、昔からこの差にこだわる人がいるけれども、近年は養殖物も評価が高い。ブリなんかでも「みかんブリ」なんてのがあって、柑橘系の果物を餌に混ぜて育てたブリは、柑橘の香りが身にまで及び、爽やかな味わいとなるし、僕は食べていないけど、淡路島の鳴門寄りで養殖されているトラフグは海流に鍛えられた身がひじょうに引き締まって美味いのだそうだ。他にも淡水養殖のサーモンとかあるしね。昔、養殖のハマチというのは脂がベトーツとしてる感じでまずかったけどね。

 うなぎの場合も養殖がいいのか天然がいいのか、けっこう微妙だよね。正直言って僕にはあまり見分け(味わけ?)がつかない。浜松駅近くで食べるうなぎは間違いなく浜名湖の養殖ものだと思うが、ひじょうに美味いよね。あと、関東や関西のうなぎの美味い店であっても、実は浜名湖のうなぎを取り寄せている店は多い。うなぎを確実に提供するならば、養殖もののほうがいいからだ。天然と言うからには漁をしなければいけないわけだが、一定量が確実に獲れるわけでもない。

 その点、養殖ではないうなぎが食べられるのは、浜名湖のような養殖場から遠く離れた地域であろう。たとえば浜名湖から天竜川の上流を約200キロ北上したあたり、岡谷や諏訪はうなぎ屋がたくさんある。ここらあたりは、諏訪湖や天竜川で獲れたうなぎである。2年前、高遠の桜を観に行ったとき、岡谷から車で天竜川沿いを南下していたとき途中のうなぎ屋に寄った。後から知ったが、この店は岡谷地区でも有名な店だった。

 なぜ岡谷や諏訪がうなぎの名所なのか。その秘密は実は養蚕にある。この地域は、群馬の富岡と並び、昔から養蚕業で名をはせていた。ご存じのように、桑の葉を食べて大きくなった蚕が糸を吐いて繭を作り、その中で蚕はサナギとなる。そして、このサナギがうなぎの大好物、栄養価抜群の餌となるのである。養蚕のついでにサナギを自給できる諏訪や岡谷では、これを釣り餌としてうなぎ漁がひじょうに盛んになり、その結果うなぎ料理が名物となったということである。養蚕業の衰退とともに、サナギを餌とするようなことはあまりなくなったにしても、養殖が始まった130年前の頃ならば、天竜川上流とか周辺の養蚕家から浜名湖の養殖場にサナギが餌として運ばれていたとしても不思議ではない、と僕は思っているのだが。

 とにかく、海と山、一見はまったく関係のない者同士、うなぎと蚕、養鰻業と養蚕業が思わぬ縁を結んでいるというのが面白い。魚とワサビみたいなことと少し似てるかな。

 

最初に戻る