日本は負けてしまったけれども、やはりW杯は面白い。一部殺伐とした雰囲気があるのは嫌だけどね。アメリカの選手を出場させろと言うトランプのごり押しとか、イランがいちいちアメリカ国内をでなきゃいけないとか、まるで現実の国際情勢そのものだったり、メキシコ対イングランドの前夜には、イングランドの宿舎ホテルにメキシコ人が集まって大騒ぎするとか、フランス対モロッコの試合では審判団五人が全部アルゼンチン人だとか、何というか、スポーツマンシップなんて微塵もないという感じ。パラグアイの議員の差別発言もひどいもんだなあ。
でも、これがサッカーというスポーツであり、W杯というものだな。W杯とは、国の威信やプライドを懸けた戦争なんだよね。そういう世界なんだから、あくまでスポーツとしてサッカーを捉えている日本が「優勝する」なんて言うのは妄想に近いかもね。でも、僕みたいな者からしたら、本来のW杯に戻ったなあという印象が強い。
ヨーロッパでは、W杯に並ぶサッカーイベントとして、クラブNo.1を決めるチャンピオンズリーグというものがあり、W杯よりもこっちのほうが面白いという人も少なくない。各国の名選手を集め、一年中練習しているクラブのほうがサッカーの質は高いのは確かだからね。浦和レッズのサポーターが基本日本代表には関心がないのと同じように、ヨーロッパの街でもそういうことはある。選手たちもクラブから給料をもらっているしね。
それである時期、チャンピオンズリーグを優先して、W杯を辞退する選手がけっこうあった。こうなると、W杯そのもののレベルが下がってしまうのである。日本代表に三苫や久保がいない状態と考えればいい。ところが今回のW杯の殺伐とした雰囲気は、それ自体は嫌だけど、昔のW杯のようでもある。すべての国、すべての選手たちがW杯こそが至上と考えているのだ。所属クラブではなく、国のために戦うことに至上の価値を見出す。今回のW杯で見えてくるのはそれだな。
こういう中では、パラグアイのように徹底的な反則攻撃で相手に勝とうとするチーム、アメリカのように政治家がごり押しするチーム、相手チームを眠らせないために騒ぎまくるメキシコ国民などがある。でも、そういうことをした国は全部負けたことも痛快だ。
くじ運が良いとは言えず、しかもパラグアイのような乱暴狼藉なチームと当たってしまったフランスだが、やはり本命、前評判通りの強さだ。今朝もモロッコ相手に2-0の完封。あのモロッコが手も足も出なかったね。アルゼンチン対エジプトで、残り時間13分で、0-2からの劣勢をアルゼンチンがひっくり返した試合は、今大会で最も劇的なものではあるけれど、そもそもフランスならばエジプト相手に失点さえしないだろう。
今のところ、一番の名勝負は、スペイン対ポルトガルではないか。しかし、長らく国際試合無敗のスペインではあるが、フランスと比べると決め手に欠けるように思われる。
そうそう、ノルウェーもすごくいいチームだ。でも、あの試合はブラジルがへぐったなあ。PKを失敗、GKと完全な一対一になった決定機も外した。本来なら2-0でリードして余裕で試合を進め、失点も1くらいに抑えただろうに。何というか、不運というか、アンチェロッティ監督がヨーロッパ流の戦略を持ち込んだのに、それを落とし込むには時間が足りなかったのかもね。
面白いのはベルギーかな。失点はするけど、それを取り返す攻撃力がある。ひじょうに面白いサッカーだ。憎っくきルカクも、まだスーパーサブとしているんだよねえ。
そして、ユニフォームが最高だ。当初からあれは何だろうと思っていたのだが、何とルネ・マグリットへのオマージュとなるデザイン、色なんですと。そういえば、マグリットはベルギー出身だったね。マグリットは現代美術で僕が一番好きな人なのである。僕の本「ミッション・カウンセリング」の装丁にマグリットの「それはパイプではない」を使っているくらい好きなのである。しかも、僕の家のトイレにも、「それはパイプではない」の絵が架かっているんだよね。つまり僕は365日マグリットと対峙しているわけだ。ここからはベルギーを応援することに決めた。
でもしかし、スペインとベルギーが対戦したら僕としては大変だな。古典も現代も含めて、僕の一番好きな画家はヴェラスケスなのだ。そしてヴェラスケスの絵も自著の装丁に使っているんだよね。
ギャー! 何てこった。今調べたら、明日はスペイン対ベルギーじゃないか!
