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魅惑のトランペット

 先週の捻挫の件だが、思ったよりも長引いている。調べてみると、2ヶ月ぐらいかかる捻挫もあるらしい。僕の場合はあと1週間はかかるな。今回助かったことは、冷蔵庫の奥に保冷剤がたくさん眠っていたことだ。お中元などで冷凍物をもらったときに入っていたやつを捨てるのも何だからと冷凍庫に入れておいたのが役に立ったね。家にいるときは眠るとき以外は患部をこれで冷やしている。30分から1時間もすると常温になってしまうので、かなりの数が必要になるけど、補って余りあるのが嬉しい。これがなかったら、今頃も痛みと腫れに悩んでいたことだろう。皆さんも、くれぐれも保冷剤は捨てないように。

 今週は素晴らしい音楽から始まったのでとても気分がいい。月曜夜に観に行ったのは、サントリーホールで行われた「松井秀太郎カルテット~ハモンドオルガンの魅力」である。

 若きトランペッター松井秀太郎のことは、そのジェンダーフリーな在りようもあって少しは知っていた。でも、よくある話題先行のミュージシャンと思い、実際の演奏は聴いたことがなかった。しかし、あるときにテレビ番組で松井がそのカルテットで演奏するのを観て、その音に心が震わされた。今までトランペットでこんな音を出す人は聴いたことがない。

 これは絶対にライブに行かねばならないとスケジュールを調べると、先々までチケット完売であるやはり人気があるのだ。しかし、なぜか直近のサントリーホールに完売間近だが空きがあった。サントリーホールのWeb予約は面倒くさいのだが、何とか友人の分と2席を購入。友人の都合は何も聞いていないのだが、ぐずぐずしていると買えなくなると思いフライングである。

 年末恒例のPUSHIMのライブに一緒に行く僕の音友は、学生時代からもう50年以上の付き合いである。トランペットには興味がないかもしれないが、松井秀太郎カルテットのドラムはなかなか上手かったので、最悪そこで満足してもらおうと都合良く考えた。彼は古希になってもなおロックバンドでドラムを叩いている人である。あのドラマーなら大丈夫だろうと踏んだ。ほんとに自己都合なのだが。

 で、幸いなことにその日は空いているということで、二人で行くことになった。友人はなお少しこのライブを不信がっているように見受けられたが、パンフを見ると、件のドラマーは神保彰の弟子であることが分かった。朗報である。それを知って彼もだいぶ気分が乗ってきたのではないか。無理矢理付き合ってもらっているという罪悪感があるので心配なんだよね。

 会場に行くとこのライブの席に売れ残りがあった理由も分かってきた。ふだん僕たちが行くライブとは客層が全然違うのである。老人が多いし、ちゃんとした身だしなみの人が多い。つまりサントリーホールという場所柄、「ハモンドオルガンの魅力」というタイトルからして、クラシック好きが多いことは明白だった。中身はジャズなんだけど、ほとんどの人は演奏を聴きながら身体を揺らさないのである。そういうのってクラシックくらいだよね。

 ああ、だから松井のコアなファンはこのライブを軽視したのだろうな。でもおかげで観ることができた。

 さてふだんはピアノのメンバーが終始ハモンドを奏でる。そこにペットがさえずり、ギターが絡み、ドラムが支える。ギターは若い女性で、はっきり言って下手で、いない方が良かったのだが、まあそれはしかたない。そこは玉に瑕だったものの、サントリーホールは噂通り音響が素晴らしく、そこにマッチしたハモンドを駆使したライブは最高と言えるものだった。僕の友人も終了後には「文句のつけようがない」と言うほどだった。よかったよかった。僕にとっても期待以上のライブだった。

 松井秀太郎のペットは華麗で美しい。本人もトランペットの華麗さ美しさをどこまで表現できるかというところに注力しているのではないか。けたたましさやワイルドさじゃなくてね。日野皓正とは対極だ。だからスローな曲や、ジャズとは言ってもスウィングで断然本領を発揮する。途中で、アメリカで活動中のサックス奏者がゲストとして入り、アドリブ中心のモダンとなったが、モダンやフリーで吹くときの松井は、上手いけれど凡庸であると言わざるを得ない。

 だからこそ彼は希有なミュージシャンなのだ。ふだんスウィングなど聴きたいと思うことはないけど、松井ならば何よりも聴きたいと思う。まだ25歳。ピアノ、ベース、ドラムと、彼よりも5歳くらい上の実力派ミュージシャンがサポートメンバーになるのもよく分かる。みな松井のペットに魅せられているのだ。

 で、僕もすっかり魅せられてしまった。次に聴けるのはいつになるのか。今年中にもう一度聴けるといいのだが。

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