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都会の流砂

 寒の戻りとはよく言ったもので、ここ数日は風冷えの日が続いている。これを過ぎればいよいよ春なのだろう。その兆しはちょっと前からあったけど、それは東京の話で、雪国はまだまだかな。今後の雪害には十分な注意をしていただきたいものだ。

 やはりアメリカは次々に関税政策を推し進め、諸外国もこれに応酬。そのうちヨーロッパと中国が仲良くなるんじゃないか。経済的には自動車頼みも日本もどうなることか。ただやられ放しでいるのか。石破首相はアメリカの談を受け、「日本の軍事費は日本が決める」と見得を切った。実行できるかは分からんが、とりあえずその意気やよしである。さらに、核禁止条約会議に参加するようになれば本物だが。軍事費はともかく、能登復興に1068億円の予算をつけたこともあるし、やはり、今のところいちばんまともな首相であるような気がする。

 それにしても、あれほど露骨な経済施策を打ち出し、アメリカはほんとに大丈夫なのか? 結局は中国の利するところになるのではないか?

 ゼレンスキーをひどく罵ったけれども、そもそもほんとにプーチンを説得できるのか? 現実には、ロシアとの話し合いが上手くいってないのではないかと。そこで、上手くいかないのはウクライナの責任だというストーリーをつくろうとしているのではないかと僕は憶測をしているのだが。

 で、いろいろな策が失敗に終わる可能性もあるのだが、その失敗を問われないことが問題ではないのか。少なくとも次の選挙までは。まあ、アメリカはまだ選挙があるからいいけど、中国なんかの場合、習近平の不動産政策は大失敗だったのだが、誰もそれを非難しないもんね。現在、30億人分の空き家、廃家があるということだ。

 でも、今や、不動産に限らず、不況は相当なもんだよ。ユーチューブで上海の駅前の様子が紹介されていたけど、人はいないし、店は潰れているしでちょっと驚いた。で、2024年度に中国全土で飲食店の倒産は300万件だって。もっともコロナ禍から飲食店に転じた人がものすごく多かったらしく、供給過剰だったらしいが。でも、300万とはね。

 ちなみに、2024年度の日本の飲食店の倒産件数は894件。中国とはスケールが違うが、これでも過去最多らしい。人口を考慮して計算すると、中国の飲食店倒産は日本の200倍以上である。やっぱり異常事態だと思うのだが、体制への批判は起こらない。

 でも中国は国としての基礎体力がある。底知れないからね、この国は。昔、貧しい頃の中国に行ったときに僕はそれを肌で感じたものだった。で、今回は、アメリカの関税政策で弱った国にアプローチをかけていくのではないか。そうやって親和国を増やしていくことで世界情勢的に優位に立とうと。不況にあえいではいるが、アメリカの政策により、むしろチャンスが生まれたのかもしれない。日本もそういうことができないか。

 アメリカとの関係はべつにしても、このまま軍拡を進めるのはどうなのか。それよりも深刻な内患があるのではないか。

 大船渡の火災はほぼ鎮圧状態にはなったけど、新たな「災害」が明らかになってきたよね。それは道路陥没だ。埼玉の八潮の陥没では落ちた運転手はもはや見つかりそうもない。以前博多駅に近くで陥没があったが、あれはあっという間に塞がったので、今回の陥没とは種類が違うのだろう。確か、あれは地下鉄工事が原因だった。しかし、八潮の復旧が未解決に加え、千葉の大網でまたもや道路陥没。いずれも経年劣化した水道管の破損が原因である。

 水道管の破損により、そこから水が漏れ出し、地下に大きな水脈が生まれる。そこに土がどんどんと流れ込んでいって地下へと沈んでいく。そして道路が陥没する。これは砂漠の流砂とまったく同じメカニズムである。僕たちの街には、都会には、砂漠と同じく、流砂が潜んでいるのだ。

 これは思ってもみなかった新たな「災害」と言える。調査によれば、劣化が懸念される上下水道管は全長で380㎞に及ぶらしい。それが日本全国を網羅しているわけだ。ほとんど活断層みたいなもの。しかも、いつかは破損することが確実である。つまりは、僕のガンと同じ。放っておけばいつかは必ず転移する悪性のガンのようなものなのである。ただし、放っておけばの話だ。この地下に眠るガンは、場所が特定できて、かならず修繕できる。

 で、まずやるべきことは、劣化が進んで危険と思われる管の発見である。この修繕には莫大な予算が必要となるだろうから、一斉にはとてもできない。危険度の高い順から徐々にやるのが必須だろう。したがって、まずはその発見と鑑定に力を注ぐべきだろう。

 ところが、では管の劣化をどう識別するのか、というと、それはある種の機材を管に押し当てて、水流の音を聴くのだそうだ。びっくり、そんな古そうなやり方をしているのか。これを「音聴法」と言うらしい。いちいち掘り返していたら莫大な金がかかるからだ。確かに。でも、音を聴き分けるというのは、相当な特殊技能じゃないのか。

 ちなみに、卵の良否を判定する際、昔はまさに「音聴法」だったということである。以前TV番組で、ある卵の生産者へのインタビューがあった。これは強烈な印象を残した。オートメーション化されたその卵農場ではあるが、以前は、一人のおばさんが卵を叩いて、その音で不良品か否かを選別していたということだった。生産者によれば、卵が悪くなるというのは、卵の殻にひびがあると、そこから菌が入り込んでしまうことに因るらしい。そのひびは、一目瞭然の場合もあるが、ほとんどは見た目では分からない。しかし、そこに勤めるベテランのおばさん従業員は、自分の指で叩いてみて、その音で判断がついたのである。それはもう百発百中だったらしい。

 しかしながら、そうした特殊技術を皆が持てるわけでもない。そこでこの生産者は、薄いプラスティックで卵を叩く機械を開発し、見ても分からない卵の破損を100%検出することに成功する。こういう人たちの創意や努力によって、安全な卵が安く買え、生卵が食べられる幸せを享受できるわけである。

 ということで、音聴法によって水道管を識別するのはいいのだが、現在それができる人が水道局には何人にいるのか、その確実性はどれほどなのか。打率10割の人が10人いるならば、たぶん3ヶ月で調査は終わると思うのだが。

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