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菅野所長のエッセイ:極彩色なツール・ド・フランス

リオオリンピックでのヨットレースはかなりやばいらしい。会場となる海の汚染度が半端ないらしく、人体にはかなり有害なんですと。そんな危険を冒すことないと僕は思うのだが、選ばれた選手は絶対出ると言う。まあ、オリンピックはそれだけ重要な案件なんだろうが。意地ってやつか。

晩年を汚すことになるんじゃないかと余計な心配をしていた宇都宮健児だが、最終的には出馬断念。最後まで意地を張っていたがね。さぞかし無念だろうが、意味のない戦いを避け、全体のために為した決断は立派なものだ。小池百合子とは全然違うね。でも政治の世界ではこういう善人は勝てない。

こうなると増田と鳥越の争いかな。女性票を集める意味では小池も侮れないけど。体勢は増田有利か。鳥越もまた善人なので正直すぎるところがあり、それが頼りなさに映っている感じ。増田は経験豊富と言われているが、所詮は建設官僚。ゼネコンとのコネ頼りに落下傘で岩手に降り立ち知事をやったわけだが、公共事業を派手にやるだけしかできず、借金をたくさんつくって終わった。都知事が増田になれば、オリンピックを始め、土建屋だけが儲かることになるだろう。そんなことで経済が活性化するなんて幻想だ。

そもそも喫緊の課題はハード面ではなくて、全国最悪の出生率をあげることとか、そのために子育て環境を整備すること、総じて福祉と教育だよね。そういうところは、理念的に鳥越のほうがマシだろう。しかも、自分はこういうことをやりたいと言っておけば、優秀な職員がやってくれるわけで、お御輿でもいいわけよ。もはや年だし、何かあんまり頭も回ってない印象だが、派手な公約をぶちまけるよりいいのではないか。

ユーロ2016は大穴ポルトガルの優勝だった。予選グループは3位。ワイルドカードからの優勝とはびっくりである。決勝は夜中というか朝方観てたけど、ロナウドが負傷退場したあたりから眠気に負けてしまった。ロナウド抜きでよく勝ったものだが、フランスのシュートがバーやポストに当たりまくりで、まあついてたな。フランス国民はがっかりだが、これでツールに専念できるかも。

第8ステージで優勝したフルームがマイヨジョンヌ(総合1位)を獲得したツールだが、これまで最高に面白かったのは、意外や、第11ステージの平坦コースだった。
残り12キロくらいまでちんたらとレースは流れ、ティンコフ、スカイといったビッグチームが前を引き、キッテル、カヴェンディッシュ、グライペルなどのスプリンターがつかず離れず満を持しているかたち。
これはいつものことで、こうしたステージでは、フルーム、キンタナなどの総合勢はステージ優勝など眼中になく、ライバルに秒差をつけられないようにゴールすることが目標だ。これが総合優勝に勝つための当たり前の作戦なのである。だからこっちもそれを予測して中継を観ている。力が入るのは残り1キロからのスプリント戦だと。
しかしこのとき、そうした思惑とはまったく関係ない選手がいた。怪物サガンである。このままでは生粋のスプリンターには勝てないとわかっている彼は大博打にでた。残り11キロあたりで猛然とスパート。彼のアシストも遅れじと追う。このとき僕は「ここでやるか!」と驚きつつも、サガンが勝つためにはこれしかないかとも思った。後ろのスプリンターたちは、ここで無理して追いかければ、最後の足がなくなり勝ち目はなくなるからと、出るに出られない。これが残り5,6キロならともかく、まだ10キロ以上あるしね。だからこそサガンにとっては大博打だが、来るなら来いとスピード耐久レースに持ち込んだ。純粋なスプリンターは一瞬の足はあるが、ロングライドは向かないのでね。
ところで、サガンのダッシュよりなお驚いたのは、ほとんど迷いなくマイヨジョンヌのフルームも猛然とサガンについて行ったことである。これもまた大博打。全ステージでフルームをピッタリマークしていたキンタナは来ない。キンタナはキンタナで平坦のダッシュがきかない選手だから。ついて行ったのはフルームのアシストであるトーマス。

そうやって予想外の4人が逃げ始めたわけだが、ティンコフ、スカイの、ビッグチームの連合。実力者がお互いの思惑を理解し、「協調」(敵味方なのに協力し、先頭を交代交代で走る)するのだから、これは速い。みるみるメイン集団を引き離していった。
4人の中だけなら、最後のスプリント勝負でサガンが勝つのは分かり切っている。それはフルームも承知。彼にすれば、総合争いで後続のライバルにどれだけ差をつけられるかが問題であって、追いつかれたら何もならない。そのためにはサガンとの協調に賭けるしかない。そのギリギリの駆け引きが最高のスリルを生んだのだ。
結果は逃げ切り、サガンが優勝。フルームが2位。いつもだったらフルームはキンタナに1秒の差もつけられないところだったが、この平坦コースで10数秒の差をつけたのだった。
僕がこれまで観た中では最高の、抜きんでて面白く、感動したロードレースだった。これは、野球で言えば、昔の、あの「近鉄×ロッテ戦」とかに匹敵するくらいのものだね。2016年の11ステージはこれからもずっと語り継がれるレースとなるだろう。これがロードレースの神髄だ。

と思ったら、翌日のステージでは、またまた歴史に残るようなとんでもない出来事が待っていた。
12ステージは、最後は超級の山を登るのだが、残り20キロを切り、メイン集団に8分差、優勝争いはもはや逃げグループの手中となった。総合1位のフルームは2位以下との秒差を広げるべく、必死でメイン集団の先頭争いをしていた。そして、何回か仕掛ると、最強のライバルのキンタナがついに遅れる。同僚のヴァルベルデも同じ。メインの先頭はフルームと他2人となった。

この3人がゴールに近くになってとんでもない事故が起こる。選手たちの前や後ろにはテレビ中継の用のバイクが走るのだが、この日は観客があふれかえり、それに道がふさがれ、前を走るバイクが突然急停車。そこにこの3人が激突する。フルームのバイクは壊れたらしく、近くにサポートカーもいない。一秒でも惜しいフルームは坂道を走り始め、走りながらチームカーの到着を待つ。まるでトライアスロンの選手のようだ。車が到着し急ぎバイクに乗ったが、1台目は仕様が合っていないのか、整備不良なのか、まるで前に進まず、またしばらくして2台目に乗り換え、ようやく普通に走れるようにはなった。が、ときすでに遅し、かなりの選手が彼を追い越し、当面のライバルには1分20秒も遅れてのゴールとなった。

このままでは1位の座を奪われることになるのだが、さすがに救済措置が取られ、フルームは総合1位のまま、なおかつ2位との差はさらに広がったのである。

何でこういうことが起きたかというと、そもそもツールの観客たちは、よくいえばアクティブ、とくにスピードが弱まる山岳では選手に触りに来たり、一緒に走ったりする連中が後を絶たない。特にこの日はゴールを6キロ手前に変更したことも手伝い、観客が凝縮してしまったようだ。選手が蚊を追い払うような仕草をするのを何回も観たが、そういう映像もいつもより多かった。日本の観客は選手の邪魔をしないことを旨とするが、そういうものとは全然違うんだよね。何しろお祭りだから。フランスや欧州中から遠出してきて、4,5時間以上は前からそこで選手が来るのを待っているわけだし。ま、ケガがなくてよかったが。

水曜は史上最高(僕の中では)とも言えるレース、木曜は史上最悪(たぶん5番目くらいだが)とも言えるレース、今ツールが熱い。

そういえば、先週第6ステージで新城が引くのが楽しみだとここで書いたが、実はチームどころかずっと逃げまくり、敢闘賞を取った。パチパチ。ツール・ド・フランスで敢闘賞を取るなんてものすごいことなんだぜ。先週は忙しくて帰りが遅かったので観られなかったんだよね。残念。
ユーチューブで観ると、残り約20キロで新城がメイン集団に吸収されるあたりでは、そのメイン集団の横を白馬に乗った奴(女かも)が疾走しているのが映っている。こういうのもツールの面白さなんだよね。他にも、さまざまな意匠を凝らす観客の映像もツールの楽しみなのだ。それにしても、こういう客だけならいいんだけどね。

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