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菅野所長のエッセイ:桜の季節

きわめて個人的な今週のビッグニュースは、「夏目友人帳」の新刊が出たことだな。他のと違って一年に一回のペースなのがつらいが。

今回所収の「いつかの庭」がよかった。以前の「石洗い」の展開と少し似ているが、こっちのほうがいい。長く続くと初期のような傑作は出にくいようだが、逆にその分、作者が狙わなくなったのか、描きたいことを純粋に描いている感じも強まっている。一生「佳作」を描くのもよしである。

秋にはアニメの新シリーズも始まるらしいが、深夜なのでとても無理。ふと「友人帳」の実写版、映画化というのはありえるのかと考えたが、もしかしたらヴィクトル・エリセならできるかもしれないと思った。誰かエリセにこのマンガを見せてやってはくれまいか。

火曜日に埼玉の奥の方に出張したのだが、本庄のあたりというのは桜が実に多い。知らなかった。タクシーの運ちゃんも、走っていれば花見に出かける必要はないと言っておった。あの桜の密度は相当だな。東京よりも桜密度は高そうである。なかでも児玉の千本桜は有名らしいが、それ以外にもタクシーで走っていて切れ目がないほど桜が咲いている。 曇天だったのが何とも口惜しいが、何しろ駅からタクシーで5000円以上も乗るところに行ったので、行きと帰り、ちょっとは堪能できたね。今年は青い空の下での桜というのを見られないままで終わりそうだが、来年はあの辺に行ってみようかと思った。

同じ桜でも、中野のあたりでは桜の伐採をめぐって住民と区がもめている。何でも、JR線路沿いの桜が老朽化していて線路の側に枝や幹が落ち、危険防止のためにJRが伐採をしてくれと区に要求したということだ。そこまではいいのだが、区のほうは近隣住民のコンセンサスを取らず、真夜中にいきなりチェンサーで切ってきたものだから住民が怒ったと、こういう顛末なのである。これはコンセンサスを取らない区が悪いが、一方で住民はこれを了承すべきである。万が一の事故を防ぐほうが断然優先だよね。

こういう問題はこれから多くなるだろう。というのもソメイヨシノの寿命というのは50~60年が平均とされていて、東京ではとくに東京オリンピックのときに植えられたものが多いらしい。それが1964年、いまが2016年。ちょうど寿命を迎える頃合いなのである。

競馬のほうの桜は毎年咲くことになっている。日曜はいよいよ桜花賞だ。
本命はやはり⑤メジャーエンブレム。かつてのテスコガビーのような強さである。
相手は⑫シンハライト⑬ジュエラーの2頭だけ、でいいとも思うのだが、いちおう3着候補として、⑩アットザシーサイド⑦デンコウアンジュ⑪レッドアヴァンセを挙げておこうか。ま、当たったとしても配当は安いな。

13歳の少女が2年も監禁されていた。もうほんとに困っった奴が増えているものである。逃げる機会はあったというが、逃げなかった、逃げられなかったというところにはきっと犯罪系の研究者が興味を抱くところだろう。基本はやはり恐怖、植え付けられた恐怖心であることは間違いない。

それ以外の要因で僕が思うのは、そこそこの自由もあったという点かなと。どうも縛り付けられていたということでもないようだし。ネットを見られたりとかね。
安部公房の「砂の女」では、終わり頃に監禁された主人公が逃げ出せるときに逃げないという描写があった。そこでも外の世界には出られないが、その中では自由に動ける状況だった。そして主人公は砂の環境に対して自然科学的なひそかな愉しみを見いだしてもいたのだった。
ま、大人の場合と子どもとを比較するのも何だが、人はどのような状況下であれ、それなりに適応していくところがある。そして人は基本的に保守的であり、大きな変化を怖がるところもあるしね。どんなに嫌で不快であっても、安定はしている状況から抜け出すのもリスクが大きいとか思う気持ちも生まれてくるのである。

しかし、僕はダメだね。耐えられない。自由であることが何よりも重要なんでね、そのためには安定は要らないんだよなあ。

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