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菅野所長のエッセイ:悲しきライブ

 先週までの猛暑がおさまったせいか、最高気温が33度以下になると、今日は少し涼しいなくらいに感じてしまう。毎年のことだが、それにしてもヒトの適応性には感謝しなければいけないのかな。

 最近、自分のダメダメさに自分で呆れる。まあ、若いときからずっとそうなのだが、自分というのはまったく厄介な存在だ。今週はお盆シーズンということでさすがに仕事は忙しくない。どこにも行くところもなく帰るところもないので、仕事をするしかないわけだが、よく考えてみれば、休みをとってもよかったのではないだろうか。

 どうも僕は休むのが苦手というか、何となく罪悪感を感じてしまうので休めないところがある。TCCを始めてからはとくにそうだが、もともと週休2日というのもなかったし、有給がどうのこうという働き方でもなかったので、そういうサラリーマン的な訓練がされていないのだ。以前は、学会とかに行くときとかでも、全部自腹を切っていたし。お金のほうはだいぶ修正されたが、休みのほうはどうもね。
 まあ、どうせ行くところも帰るところもなく、家でダラダラ過ごすだけだからいいんだけど。しかも、3日以上もそうやって過ごすと、もはや仕事に行きたくないという状態になってしまうから、そこも気をつけないといけないのだ。やっぱり、休みとは言えないが、学会とか出張とかいう名分で仕事場を離れるほうが自分には合っているのかもしれない。

 まあしかし、夏バテというか、心身の調子はよくない。とくに気力が湧かない。そんな中、かろうじて、来月用の原稿をひとつ書いたのはよかったかな。とにかく、9月くらいになれば気候も変わるし、仕事のペースも変わるから、そうすればもう少し気分も変わるかもしれないと、ひたすら今は毎日をしのいでいけばそのうちいいこともあるかもしれないと思ってやっている。何かやってみようかなと思うことはあるのだが、まったく行動には起こせないし、なにもしないで時の流れに身を任せるしかないな、こういうときは。

 そう考えると、先月、先々月のほうがまだよかったかな。ライブに行ったりしたもんな。 6月、念願の高鈴のライブ。でも、小さなスペースで背の付いてない丸椅子はぎっくり腰が完治していない身にはつらかった。あまりにつらいので途中で出てきたものな。ライブの途中で出るのは、ホイットニーの埼玉アリーナ以来か。あれはひどいものだったからな。
 高鈴のほうは、腰のせいとも言えるが、肝心の中身も期待はずれだった。花粉症とやらで声がちゃんと出ないと言っていたが、いや、それよりも歌い込みが足りないんじゃないかと思わせたね。ボーカルとギターのユニットなのだが、ギターのバッキングも物足りないし。ああ、やっぱりメジャーになれないのもわかるなあというのが僕の感想。
 しかも、こういうアコースティックサウンドにはありがちだが、MCの多さにもうんざりする。こっちは音楽を聴きに来ているのにと思っちゃうわけだが、しかもそれが拙いし、面白くないしで、腰の具合に関係なく帰りたくなったと思う。

 では、何で7月にも行ったのかというと、こちらはバックに5人の弦楽がつくからである。しかも、今度は背の付いた椅子だったので最後まで聴けた。喉の調子も先月よりいいし、ストリングスが入るとまったく違う感じになるし。でも、むしろ今度は歌がバックに負けちゃう。ギターも当然負けちゃうし。バイオリン、ヴィオラ、チェロの3人で十分でしょ。
 そして、かわらずMCが多いのには閉口する。客はどうもそういうのも楽しんでいるらしいが、これはほんとに日本のフォーク時代から続いている悪しき伝統だね。昔聞いた話では、松山千春とかのコンサートでは、曲は2曲くらいしかやらないで、あとは全部松山の説教みたいな話を聞かされるらしい。よくそんなのに行く奴がいるなと思うのだが、そういう客を相手にしているから、あの連中は音楽的にまったく成長しない。吉田拓郎だけがちょっと違うけど。
 さっきのホイットニーのライブだって、見た限り僕以外は誰も帰らないしブーイングもしない。日本の後でのヨーロッパ公演では「金返せ!」のブーイングがすごく、結局ツアーも中止になったくらいだった。

 で、高鈴の場合も、ライブ数は少ないし、客はそういう客だしで、たぶん昔より退化しているんじゃなかろうかと思う。ボーカルはやはり高音域が出切らない。ギターも音質的にガットギターにしたほうがいいということもあるが、それよりもっとバッキングを勉強しろよ、いちおうプロなんだろと思う。キャロル・キングがアコースティックでやった「リビングルームツアー」とか参考になりそうなものだがね。

 ま、ストリングスが入れば聴けるといった感じで、これはCDで聴く音楽だな。でもそれって致命的だよね。ミュージシャンなら、プロなら、「ライブのほうがいい」と言わせなきゃ。晩年のホイットニーはそれはひどいものだったが、初来日の頃の武道館、あの完全無比とも言えるファーストアルバムを、生歌ははるかに凌駕していたものな。あれにはほんとに驚いたものだった。

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