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サメとサケ、ときどきカツオ

年が明けてからもうひと月近く経った。早いものだなあ。

 年末年始にかけていろいろ思ったことがあったのだが、そういうことを書くタイミングを逸していたな。今頃だけどそのあたりも含めて書いてみよう。

 いちばん思ったのは腰痛がなくてそれがとても快適だったことだ。去年の秋の腰痛はほんとに大変だったんだなと痛みがないことで再認識できたね。何もないことの有り難みというのは、年を取らないと分からない。

 年末、大晦日と言えば除夜の鐘だが、去年梵鐘に目覚めた僕としては、これを聴くのが楽しみだった。テレビで観たのは、まず浅草寺。これは実際に聴きに行っているので、やはり物足りない音である。

 日本でいちばん有名と言えるのは、京都の知恩院の大鐘だ。僧侶が17人がかりで鳴らすこちらの鐘は、年に2回しか聴くことができない貴重なものである。その様子を観ると、まずは僧侶がゾロゾロと連なって鐘楼に上がっていくのだが、このとき思ったのは、みなきらびやかな袈裟を身にまとい、恰幅がすごくいいことだった。さすが京都の高僧、精進料理などまず食べることなく、飽食の生活を送っているのだろうなと察する。で、鐘の音なのだが、鋳造は江戸時代、やっぱりあんまりいいものでもない。直接に聴けばもっといいのかもしれないけどね。

 この知恩院に加え、京都の方広寺、奈良の東大寺の鐘が、日本3大銘鐘と呼ばれている。もちろん、歴史的には価値がある。方広寺の鐘は例の「国家安康」が刻まれ、大坂夏の陣、豊臣家の滅亡のきっかけとなったいわく付きの鐘である。で、ユーチューブで、方広寺、東大寺の鐘の様子を観たけど、やっぱり鐘の音としては物足りない。東大寺の梵鐘は奈良時代の鋳造であるから、国内でも相当古い国宝の鐘である。でも音は大したものでない。

 ほんとに皮肉なことだと思うのだが、鐘は古いほど味わいがないのである。いまのところ、平成生まれの西本願寺の鐘の音がもっとも余韻があり、味わい深い。

 ところで、鐘を鳴らすときには、でかい柱のような木で打ちつけるでしょ。あれは「撞木(しゅもく)」と呼ばれるものである。英語名ハンマーヘッド、和名シュモクザメは、あの独特の頭部がこの撞木に似ているからそう名づけられた。このシュモクザメの頭は、砂の中にいる獲物を探知するためにある。あの頭から微弱な電流を流して獲物の位置を特定するんですと。ほんとに不思議な魚だ。というわけで、浅場に生息するサメなので、だから日本の沿岸でもよく見られるものだ。僕の印象では日本海側によくいる感じで、海水浴が禁止になったりするニュースもちらほら上がる。

 実際、兵庫豊岡市の袴狭遺跡からは、シュモクザメが描かれた板絵が出土している。他にはサケとカツオも描かれているのだが、昔からこのあたりの日本海側ではこういった魚が獲れていたというわけだ。それにしても昔の人が見ても、シュモクザメは摩訶不思議な形をした魚であったことだろう。シュモクザメの絵は意外なところからも発見されている。何と、奈良法隆寺の釈迦三尊像の台座の裏にもシュモクザメの墨絵が残っている。驚きだよね。たぶんその奇怪な形状からして魔除け的な意味があったのではないかと推測されているのだが、たぶんそうなのだろうな。

 サメだから食べても旨くはないし。ああ、フカヒレは珍重されるか。でもフカヒレ自体には味がなくて、あれはスープの味であるに過ぎない。僕はまったく食べたいと思わないよね。

 僕は昔、トカラ列島でサメの燻製を食べたが、それは案外おいしかった。少なくともウミガメよりはサメのほうが旨いと思ったのだった。日本海ではシュモクザメ以外でもサメはけっこう獲れたようで、中には刺身で食べるところもある。なぜか広島の山中では今でも「ワニ料理」として出てくる店がある。中国地方ではサメのことを古くからワニと呼ぶ。出雲伝説の因幡の白ウサギの時代からだよね。でも、食べた人の話では「アンモニア臭かった」と。そうサメは直ちに食さないとすぐにアンモニア臭が立ちこめる魚である。だから蒲鉾にするくらいしかない。でも僕の経験では燻製にすると旨い。酒の肴にもご飯のおかずにもなる。

 北アメリカのエスキモーの伝説ではサメと夫婦になった娘の話というのがある。夫婦の間には10匹の小ザメが生まれた。で、そのうちの1匹が人間に傷つけられたのだが、ある老婆が小便桶の一部を切り取り、それを傷口に縫い付けて治した。それ以来サメは小便臭くアンモニアの匂いがするようになったという話。しかし、あんな寒いところにサメがいたとはね。そういうサメもいるのか。

 日本海側であるから、サケも南下してくる。一方、カツオは、南から黒潮に乗って北上し、九州南端で2方向に分かれる。ひとつは太平洋側、もうひとつは日本海側だ。大半は太平洋だが、一部は日本海を北上する。マグロもそうか。 それで中国地方の北部、兵庫の北部でも獲れたのだろう。が、カツオは足が早いので、関西の南部までにはあまり輸送できない。同じくサケもそうだったのだろう。関西人は塩漬けのサケを好まなかったのだろうし。

 サケはたぶん兵庫から山口あたりまでが平均的な南限だったのだろうが、カツオなどよりも気候の影響が大きい魚だからどんどんその限界も北に引いているはずである。昔の記録では、太平洋側の関東地方でもサケの遡上があったらしい。江戸時代には利根川でもサケの遡上がたくさんあったらしいのだ。ほんとかね。

 記録によれば、銚子の河口から遡上したサケは、佐原あたりまでは海水と淡水が混じっているのであまり美味しくない。しかし、佐原から先になると完全に淡水になるのでひじょうに味がよくなるというのである。そういうものなの? そういえば富士山の近くで、淡水で養殖されているサケがあって、ホテルの朝食で出されたその焼きサケはとても旨かったなあ。サケは淡水にいることで味がよくなるのだろうか?

 逆に、イクラは、サケが海にいる間に獲れたもののほうが粒が小さくて旨いというよね。粒が大きくなると旨くなくなるわけ。僕もそう思うのだが、なかなかそういう良質のイクラに出会うことはない。たとえ北海道にいてもだ。それでも、ほんとに旨いイクラやウニは北海道に行かないと食べられない。残念だけど、だからこそ現地に行く価値があるってもんだな。

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