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長谷川マイナス「長」

 ちなみに、谷川萌々子は「タニガワモモコ」ではなく、「タニカワモモコ」です。濁点なし。「釣りバカ日誌」の浜ちゃんと一緒なんで、そこんとこよろしく。

 ということで、やってくれましたね。萌々子ちゃん。このコラムでも何度もその名前を出しているのだが、絶体絶命の状況での大仕事。すごい。すごすぎる。ブラジルが気の毒。まさかあんな結末が待ち受けていようとはね。世界を震撼させたなあ。

 しかし、知っている人は知ってる。あの超ビッグクラブのバイエルンが、18歳の日本の高校生と契約するには相応の理由があるわけよ。入団後すぐにスウェーデンにレンタルしてるが、プロとして何の実績もないわけだから当然の様子見ではあるよね。でも、この夏にはバイエルンに戻すという情報だ。何しろ、18歳の新人なのにいきなりチームの10番をつけ、ほぼ全試合で得点。確か14試合くらいで13試合は得点してんじゃなかったかな。一枚落ちるリーグではあるけど、スウェーデンでは無双状態なのである。

 同じ19歳ということで比較すればかつての長谷川唯よりも上だろう。ハイティーンの頃にはすでに日本でいちばん上手かった長谷川だが、ほんとにすごい選手となったのは海外に出てからだ。それは24~5歳くらい。ボールさばきや読みなら長谷川だが、シュート力、フィジカルは断然谷川である。今回も30メートル級のスーパーゴールを決めたが、U-17の頃の国際試合でも同じようなゴールを決めている。僕の記憶では、しかもそれは左足だった。とにかく、彼女は両足同等に使える希有な選手でもある。

 で、金沢ではもしかしたら谷川を見られるんじゃないかと思って期待したのだが、ここでも書いたとおり、試合前のウオーミングアップのとき、独り寂しく球拾いをしてたのが谷川だった。こりゃよほどケガの程度が悪いんだろうなとわかる。

 が、ここでは書かなかったのだが、試合前の練習が終わって、選手たちが控え室に戻ろうとするとき、その流れから少し後発にいた谷川は、持っていたボールでリフティングを突然始めたのである。えっ、そういうことは止められてるんじゃないの、と思ったのも束の間、それは5秒くらいで終わり、谷川は再びボールを抱えて他の選手たちの流れに戻っていった。出られない悔しさ、練習できない切なさが押さえられなかったんだろうなあ。

 でも、そのリフティングは上手かったねえ。僕はよくなでしこの練習風景なんかもユーチューブで見るのだが、あれを見ると各選手の技術がよくわかる。ボールさばきがうまいのは断然長谷川である。当然だが。長谷川とはだいぶ開きがあって、次に上手いのは田中美南である。まあ、田中を使う理由というのは、こういうとこなんだろう。疑問だらけだが。それから熊谷とか高橋とかはほんとに下手なんだよね。とても代表選手とは思えない。

 で、谷川がほんの一瞬だけ見せたリフティングだが、僕には長谷川クラスと思えたね。でも、あくまで僕の主観だし、その時間も短かったしで、ここに書くのはやめておいたのであった。でも、あのブラジル戦を観れば、どれだけすごい選手なのかはあっという間に知れ渡ったよね。とても嬉しい。ついに世界にもバレてしまったな。しかし、争奪戦とはならない。すでに買っているバイエルンは大喜びだ。

 争奪戦が始まるであろうのは、男子チームのGK、小久保怜央ブライアンだろう。先日、シントトロイデンに移籍となったばかりだが、ここは日本人オーナーの腰掛けクラブ、世界のビッグチームが放っておかないだろう。何しろ「国防」の二つ名があるくらいだ。

 さて問題は谷川がどれくらい試合に出られる状態なのかどうかだな。とにかく、なでしこジャパンは満身創痍。北川が復活したのが喜ばしい。この選手の力は金沢でじっくり見せてもらった。国内組では、藤野とともに国際レベルだ。その藤野だが、車椅子からはたして復活できるのか。ナイジェリア戦も藤野がいれば更に一方的だったろうに。ここまでのところ、よく走れている選手は、浜野、宮澤、清家だな。あと意外なことに守屋。これに藤野、谷川が加われば、いよいよ長谷川も本領発揮できるかもしれない。

 代表での長谷川はほんとに報われないと感じる。マンチェスター・シティの監督は長谷川の適性、特性を見極め、彼女中心のチームを作り上げたが、池田監督にはそれができない。走攻守という総合力では長谷川が世界一の選手だと僕は思っているのだが、そのような選手を擁しているというアドバンテージをほとんど生かしていないのである。悲しいなあ。

 つまり、大きな問題はベンチワークだよね。去年のW杯の采配はまぐれだったかもという疑念がひじょうに濃くなってきた。ブラジル戦のPKで監督が指名したのが田中と熊谷だっていうんだからね。池田監督、この二人と心中するつもりなんだろうか。嫌だあ。それは絶対にあってはならない。でもブラジル戦で池田監督がやったことはそういうことだったんだよね。谷川がすべてを救ったことでチャラになりそうだが、忘れちゃいかんね。これは男子監督の森保と同じ道かな。森保もあの三苫をずっと控え選手として扱っていたほどの不明だからな。

 オリンピック見てて、日本にはもちろん勝って欲しいけど、負けても納得のいくような負け方をして欲しいと思うんだよね。たとえ負けても、日本人であることを誇りと思える、そんな勝負が見たいわけよ。たとえば、柔道の阿部詩とか、ああいう姿はあり得ない。みっともないと僕は思う。同じく、判定に不服として相手選手との握手を拒否し、会場に居続けた男子選手もいた。あれは韓国選手団のお家芸で、日本人は皆あれをひじょうにみっともないと批判してたはずなのに、同じ事をやっちゃってるよね。あれもあまり批判されてないよね。

 阿部詩の場合だが、もしも、ああやって号泣してたのがいかつい男子選手だったら、皆どう思うのだろうか? 阿部詩と同じように思えるのだろうか? 多分違うものになっているだろう。非難轟々かも。

 まあしかし、試合の進行をさほどに邪魔してはいないのであれば、僕もまあいいんじゃないのと思うほうである。こういうことの判断は、本人と柔道連盟がどう考えるかだろう。柔道の生みの国が柔道という武道をどのようなものと定義するのか、そこが肝だ。しかし、この答えは実は明らかである。講道館柔道の創始者、嘉納治五郎は、負けても感情に流されず、みっともない真似はするなと言っている。ちなみに嘉納治五郎は東洋初のIOCの委員であり、柔道について、勝ち負けよりもその精神性を説いている。

 で、そういう武道精神というのがそもそも古くさいと思う人もいるわけだが、僕には、そういう意見を封殺する気持ちもない。だからそこも含めて柔道連盟がどう考えるかだが、この二つの出来事について連盟は何も言っていないのではないか。

 と言うのも、人気抜群の阿部兄妹に対して連盟は及び腰である。かつてジャンボ尾崎の反則行為、マナー違反に対してゴルフ連盟が何も言えなかったように、人気の担い手である阿部兄妹の存在、影響力はものすごいのである。

 今回、女子48キロ級で角田美南が見事に優勝したが、この人は31歳で五輪初出場だった。これだけの実力者が初出場というのも意外だが、実はもとは阿部詩と同じ階級だった。対戦成績は角田の3勝1敗。しかし、角田はなぜか52キロ級から、つらい減量を強いられる48キロ級に移ったのだった。はて面妖な。

 当時の僕の印象では、すでにスター選手となりつつあった阿部詩に角田が譲ったという印象が強い。そして、その背景には連盟のプレッシャーもあったのではないかと推察している。

「よう、美南ちゃん、よう。今や詩ちゃんは柔道界のヒロインなんだよね。柔ちゃん以来のね。だから、連盟としても、兄貴の一二三とともに大切に育てていきたいわけ。美南ちゃんなら、そういう事情はよおく分かるでしょ。だからさあ、52キロ級は詩ちゃんに譲ってくれない? あの子は体格的に減量は難しいんだよね。美南ちゃんが移ってくれたら、今後連盟は助力を惜しまないからさあ、ここはひとつご協力をお願いしますよ」

 こんな会話があったのかどうか。でも僕の想像ではけっこうリアルだ。

 さて、オリンピックだから、書くことが多くて書き切れん。来週は、阿部詩問題をきっかけとして、選手のメンタルなところに肉薄していこうと思っているのだが。ああでも、なでしこのアメリカ戦はどうなるのだろうか。男子のスペイン戦も。

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