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歌はこころ

 今週はブルーノート東京のPUSHIMライブを観に行った。2DAYS、4ステージだが満席。もう関西限定の人気ではないのだな。

 前回もそうだったが、ブルーノートではいつものPUSHIMバンドからはバックボーカルだけの参加。バックは別のバンドである。こっちでは違うパフォーマンスをしたいらしい。まあ、サザンと桑田バンドの違いみたいなもんだな。セットリストも大幅に違い、今回は、男のラップ歌手が加わったのだが、僕としてはこいつは要らないって感じだった。

 PUSHIMの声も若干良くない。あのコロナ開けの十分に喉を休めた頃のような声は出ていない。メンテナンスが悪いのか、それとも衰えなのか。その辺の判断は暮れのビルボードに持ち越そう。今回は、ドラムの音とキレが抜群だったことに満足。

 歌で言えば、この半年くらい密かに楽しんでいたのが、「トロットガールズ・ジャパン」。これは前にも紹介しているが、懐かしの曲を歌うオーデション番組。「トロット」とは、韓国で流行っているジャンルなのだが、韓国のテレビ局がWOWOWと提携して日本版を試みたものである。そこで上位に選ばれた歌手が、本場の韓国に乗り込んで韓国の歌手と歌合戦を繰り広げるという、よくよく考えれば、韓国のテレビ局のためにあるオーディション番組ということだ。

 でも、これが面白い。「アメリカンアイドル」ほどのものはないけど、意外にレベルが高いのである。

 日本での大会では、上位7人が選ばれたが、その中でも異質中の異質なのが50歳のセミプロ歌手、その名も歌心りえ。「歌は心」をモットーにしているから芸名もそうしているというのだが、けっこう恥ずかしい芸名ではないのか。それがまた、高校生などが混じり、30代がわずか、平均年齢は20代という参加者に混じっているのだから、どうしたって注目を集めてしまう。

 そして、この人の歌がすごいのである。他を断然圧している。この人を歌を聴くと、「歌は心」ということがほんとに理解できる。たとえば、僕はさだまさしとか怖気が走るほど嫌いなのだが、この人が歌うと心が震えてしまい涙が出てくるのである。あるいは中島美嘉なんかもいったいどこがいいのかと思うのだが、この人が歌う「雪の華」は至高の名曲になる。

 そうして実力的には他を圧した歌心りえさん他、計7人が韓国に行って歌合戦に臨むことになった。10代が2人、20代が3人、30代が1人、そして50歳が1人。小さい頃からお年寄りの施設を慰問する歌手として活躍する高校生、広島カープのチアガール、昔のアイドル崩れが2人、韓国で歌手になることに失敗した人、一流企業の人事部社員、そしてりえさんは歌謡酒場みたいなものを経営しているようだ。このオーディションに賭ける思いもそれぞれに伝わるものがあり、それもまたこうしたオーディション番組の醍醐味ではある。

 で、韓国で待ち受けるのは、すでにトロット歌手としてそれなりに確立している7人の歌手。つまり、日本からの彼女たちと違って、プロなのである。韓国のエンタメのレベルは、日本よりもはるかに高いので、この人たちの歌もびっくりするほど上手い。ああ、日本の「歌手」は完全に咬ませ犬だなとまずは思う。要は、番組やトロット歌手を日本に進出させるという目的だからね。

 しかし、一人歌心りえさんだけはまったく違った。韓国に行ってからのほうがさらにすごくなった。彼女の歌を聴き、韓国の歌手たちはみな驚きを隠せず、涙さえ流す。日本語(韓国語字幕)でしか歌わないのに。

 それは視聴者も同じだった。この番組は韓国内で最高視聴率を示したらしいが、多くの視聴者が自国の歌手をさておき、No.1は歌心りえだと主張した。そして最終的に韓国の歌手がMVPとなってネットは少なからず炎上。「歌心りえがMVPでないのはおかしい」「MBCは不公正だ」という声が高まった。韓国人や中国人が、こうした「採点競技」で、自国よりも日本人を応援するのは希有なことだろう。重ねて言うけど、字幕付きとは言え、完全に日本語の歌なんだよね。

 ようするにそれが彼女の実力、「歌は心」を示しているのだろう。これまでほぼ無名ではあったが、この「事件」により彼女は一気に脚光を浴びるのではないか。歌謡曲限定だけど、いつかこの人の歌を生で聴いてみたいと思う。  これがあるんで、先日PUSHIMのことがちょっと心配になった。PUSHIMのいくつかの名曲も、歌心りえさんが歌うほうがいいんじゃないかと思ってしまう自分がいるんでね。

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