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桜の季節ー平和への礎石その③

 水曜未明、眠気も吹き飛ぶ事件。日本代表がイングランドに勝ってしまった。ブラジル戦のときのように泣きはしなかったけど、サッカーの母国イングランドに勝つというのはやはり事件である。世界ランク4位。日本は18位だもの。

 その3日前、スコットランドにも勝っているが、イングランドとは比べようがない。スコットランド戦での先発メンバーはGK鈴木ザイオン以外はほぼ2軍だったし。でも、2軍でいい勝負。後半、伊東とか三苫とかの1軍が出てくると相手を圧倒。スコットランドレベルだとまるで日本の敵じゃないことが分かる。

 一方、イングランドはやはり強い。ベストメンバーではないのだが、日本のベストメンバーよりも上手くて強い。少ないチャンスを生かした虎の子の1点を守り切って勝ったけど、大半の時間は攻め立てられてばかりでハラハラしたなあ。もちろん日本もすごくちゃんと守っていた。走り負けることなく、一人の選手に対して2人3人と詰めていき、プレッシャーをかける。日本のお家芸のハイプレス。昔なら、引いて守るしかできなかったのだが、今はボールを奪うためのディフェンスである。でも、イングランドはそんな蜂の襲来をかいくぐってくるわけで、観ていると生きた心地がしなかったね。

 それにしても、三苫のゴールはなかなかお目にかかれない美しさだったなあ。中盤後ろで、自分で相手からボールを奪って、パスして走って、自分でゴールである。「三苫劇場」とも言ってもいいのだが、ゴールに至るまでにボールをつないだ連携がすばらしかった。とくにアシストの中村敬斗。不運にもフランスリーグの二部にくすぶる中村だが、この試合では、ビッグリーグでも通用する実力を遺憾なく発揮してくれてとても嬉しい。すごい男前なのだが、世界でも有数のおしゃれなプレーをする選手である。

 正直、実力ではイングランドが勝る。しかし、戦い方によっては勝てないわけではない。しかも、今回も観客数7万超のアウェーの中だからね。日本には確かな力が備わっていることが次々と証明されているな。W杯本番でオランダを負かせるかもしれないと思うのは決して虚勢ではないのだ。ここ最近、4位のイングランド、5位のブラジルに勝ってるのは事実で、オランダは7位だからね。

 一方、女子ではニールセンが電撃解任だと。びっくり。いちおう任期だったようだが、協会からは評価されてなかったんだろうね。もっとも協会の評価ってやつは、自分たちの言うことをよく聞くかどうかの比重が大きいのだが。たぶん、一番の問題は、谷川をまるで干しているかのような起用をしていることではないかな。

 さて、難しいのは後任だが、僕が激推ししたいのは、現在イタリアのセリエAコモで監督しているセスク・ファブレガスだ。かつてバルサやチェルシーでプレーした名選手。38歳。監督歴は浅いが、昨年コモを一部に引き上げ、昇格後もⅠ敗しただけの7位につけている。今シーズンが終わらないとだめなんだろうが、今から予約して欲しい。

 おまけの情報としては、イングランド戦の後、敵地ウェンブリーのスタジアムに乗り込んだ日本のサポたちが例によって後片付けをしている映像が上がっている。それに対してはやはりいつものように世界中が称えている。負けようが勝とうが、ホームだろうがアウェーだろうが、いつも当たり前のように行う。こうした行動も言葉や文化を越えた友好を支える要素となっていることだろう。

 サッカーの結果も大事だが、話の本題はこっちだった。次に進もう。

 さて、今週は東京で早くも桜が満開である。

 先日は、ワシントンのポトマック河畔の桜も満開となったと、アメリカのテレビ局が大きく取り上げていた。約2000本とも3000本とも。周知の通り、この桜は1912年日本から寄贈されたものである。ソメイヨシノだけでなく、吉野桜やオカメ桜など12品種。だから色が白いのも多い。逆に日本ではあまり見られないので、美しくもある。河畔にとても映えて見えるな。

 前にこのコラムでウズベキスタンの桜について紹介したように、中国のパンダほどではないけれど、日本の桜もまた外交の一助を担っている。ワシントンの桜は、満開の季節には100万人以上の人が集まり、人々の目を楽しませる。桜は世界で愛される花だ。

 しかし、ふと思った。戦争中はどうだったのだろうか? 真珠湾の開戦があってから、アメリカ国内は日本憎しの感情で渦巻いていたはずである。この桜も無事では済まなかったのではないか?

 と思ったら、やはり「あんな桜は切り倒せ」と激情した輩もいて、開戦の数日後に、一部の桜は無残に伐採されたらしい。この辺、弘前の桜の話とちょっと似てるなあ。

 ところが、そうした一部の声を抑え、政府関係者や市民の尽力によってこの桜の大半は守られたのである。これが中国とか韓国だったら、政府も市民も一緒に声を張り上げて一本残らず伐採し、派手に燃やすんじゃないかな。

 一方アメリカは違うんだよねえ。ちょっと感心する。なぜなら、終戦後、戦争の影響で東京荒川土手沿いの桜がなくなったことを知ったアメリカから、このポトマックの苗木が贈られたのである。逆輸入? うーん、こういうところがアメリカらしいと言えばらしいのだが、よくよく調べると、1912年の桜の贈呈に当たって、日本の姿勢がまずはすばらしかった。

 当初アメリカとしては、90本ほどの苗木をもらいたいとなったらしい。それに対して、ポトマック河の形状や規模などを勘案した日本側が、そこを埋め尽くす景観をつくるためには2000本が必要だとして、アメリカが望むよりもはるかに多くの桜をプレゼントしたのである。こういうとこ、日本人らしいよね。

 しかし、好事魔多し。海路でアメリカへの輸送中、その2000本の苗木は害虫による病気で全滅してしまうのである。長い時間をかけてこぎ着けたプロジェクトが、思いもかけぬことであっという間に挫折である。日米ともに、関係者はどれほど落胆しただろうか。

 けれども,当時の東京市長はめげることなく、より害虫に強い、たくましい桜の育成を指示する。このときに選ばれたのが、荒川で採集された、ソメイヨシノなどいくつかの品種であり、これに大阪の伊丹市の桜を接ぎ木してより強い桜を育てることになったのである。つまり、ワシントンの桜は荒川生まれの伊丹育ちということになる。戦後ワシントンから荒川に苗木が贈られたのは、逆輸入と言うよりも「里帰り」だったのだ。

 いい話だよねえ。ワシントンの桜の誕生には、東京市長尾崎行雄、科学者高峰譲吉など、多くの日本人の尽力があった。その実現は決して簡単ではなかったのである。アメリカ(ワシントン市)もそれをよく知り、感謝していたからこそ、戦時中もこの桜が大事に守られたのではないか。たとえ敵国日本を象徴するものであってもだ。これを守った「政府関係者」というのも,この贈呈の裏側にあった物語、日本人の厚い誠意について知っていた人々だったのであろう。そして、戦後はその桜を日本に贈ることもした。つまりは、恩讐を越えた関係性が桜を通じて生まれていたのだ。   

 かつてパンダがそうであったように、桜は平和の象徴と言っていいのかもしれない。今や世界中の人々が日本に桜を観に来ることも、桜が何よりも秀でた外交官であることを示しているのではないか。ワシントンの桜の場合、時代的には、現代よりも国の意向というものが大きかったのだろうが、地方行政との間、互いの市民の間で善意の思いが交流していたことも事実ではないかと思う。大きな政治という枠では、アイゼンハワーが唱えたような政策があり、それが民間の交流をも加速させたのであろうが、基本的には、国民や市民一人一人に平和への意思があれば、そしてちょっとしたきっかけさえあれば、さまざま手段が発見されるのではないだろうか。

 東京の人はあまり知らないかもしれないが、2024年まで神戸の王子動物園にいたパンダのタンタンは、1973年に姉妹都市(中国の場合は友好都市)となった天津市から2000年に贈られたものである。

 さらにとても意外なことがある。現在は最悪とも言える日中関係であるが、実は日本との友好都市の数はアメリカの次に多いのだ。アメリカが471都市、中国は381都市、多いでしょ? 3位の韓国で167だからね。国土の広さということはあるにしても、日中関係のことを考えるとすごく多いように思える。

 かつて田中角栄が北京に降り立ち、周恩来がそれを迎えるというTV中継を日本中が食い入るように視聴した。そうやって日中の国交が回復したのが1973年だった。神戸と天津が友好都市となったのはその翌年で、日中で最初のこと。そこから始まりった日中の友好都市はとくに1980年代から爆発的に増えていったのである。政治上はいつもバチバチとしてしてしまう日中関係ではあるのだが、友好の下地はそんなところに隠れているわけである。

 それでも、なんでうまくいかないのか、次回はそれについて少し考えてみたい。

 

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