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日本の奥行き

 前評判通り「SHOGUN 将軍」がエミー賞を席巻した。これ以外にノミネートされたドラマは知らないのだが、僕が観た限りではかなり面白い作品だったので、さもありなんである。昔、リチャードチェンバレン主演での「将軍」はとくに記憶にないしね。主演真田広之は、あの当時のような程度の悪い日本理解を覆すためにプロデュースをしたと聞くが、それはある程度成功しているのではないか。

 日本料理と言えば、鮨と天ぷらくらいしか知らなかった外国人が、日本にはとんかつやラーメン、すき焼きもあるし、抹茶関連やアイスもすごく美味しいと分かってくる、「将軍」もそうした役割を果たしたのではないかと思う。

 

 こうした動きや傾向は同時多発的である。日本サッカーがスペインやドイツを打ち負かし、日本のマンガやアニメが世界を制覇する。2度目の五輪が開催され、パリでは世界で3番目のメダル数を獲得した。かつて世界の経済大国として名をはせた日本が、経済以外のことで世界を賑わしている。僕としてこちらのほうが価値のあることで、似たような経緯をたどっている中国には真似できないだろうなと思うところである。

 前にも触れたが、最近ではアニメ、マンガの「葬送のフリーレン」が世界的な人気を博していると聞いてとても驚いている。「ドラゴンボール」や「ワンピース」といった、子ども向けでもある、分かりやすいものが人気があるのは理解できるが、「フリーレン」は大人な、他と比べたら地味な作品だ。(実は「ワンピース」は違うのだが)。

 「フリーレン」、日本人ならその静謐さを理解できるだろうが、外国人には難しいのではないかと思っていた。大トロは美味しいと思うが、ヒラメやカレイを食べると首をひねるのと同じでね。しかし、「フリーレン」の人気を思うと、マンガやアニメにかんしては、世界が日本に追いついてきているかなと思う。

 かつて、「もののけ姫」や「ナウシカ」がアメリカでまったく人気にならず、それどころかストーリーの改変まで要求されたという時代があった。アメリカは勧善懲悪、実利主義、単純な思考の文化であるから、何が正義で悪であるかが判然としない作品にはついて行けないわけである。

 映画制作上の技術スタッフは完全にハリウッドではあるが、細かい演出などに日本人がかかわった「将軍」は、まずまず日本の時代劇ドラマという感じはする。40年以上前の「将軍」とは比べようもない。

 しかし、僕がひじょうに不満に思うことがある。僕が思うに、この作品を最も日本の時代劇たらしめていたのは、虎永の腹心、広松の存在であり、それを演じた西岡徳馬である。彼の切腹はドラマのハイライト、ターニングポイントでもあった。

 かといって、西岡の演技が、とくに目立つような名演技だったのかというとそんなことはない。西岡は日本でのドラマと同じように、凡庸に、ステレオタイプに、官僚でもある忠臣を演じている。しかし、それ以外の役者がみなさほどリアルな演技とも思えなかった中で、西岡の演技は、この侍の時代という枠にものの見事にはまっていたのである。ここに助演男優賞が下りなかったのは残念だと思うと同時に、アメリカもハリウッドもまだまだだなと思う。もっと日本を知らないとね。

 実はアニメでもそうなんだけどね。シリーズの①が終わって世界では「フリーレン・ロス」が起きていると聞くけど、同じように「夏目友人帳」が評価されるのなら、世界もかなり日本に追いついてきたと言えるのだが。

ま、しかし、日本人も日本のことを過小評価している向きがある。先日、僕も知ったのだが、日本の国土面積はだいたいドイツと同じなんだと。けっこう大きい。隣国である韓国と比較すると、3倍以上ある。われわれも、そしてたぶん外国でも、「日本は小さな島国」と表現することが多いのだが、そうでもないんだよね。

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