「男子 三日会わざれば刮目して見よ」の諺があるが、昨夜のバーレーン代表がまさにそれだった。半年前には5-0で日本の圧勝だったのに、昨夜はホームで大苦戦。ひょっとして0-1くらいで負けもあるんじゃないかと思ったくらい、バーレーンは強かった。ファールも少ない。韓国やオーストラリアよりもかなり格上に見える。
何でこんなに違うの? と普通は思うだろうが、最近のバーレーンは、1月、中東8カ国のガルフカップで、サウジ、イラクなどの強豪を負かして優勝しているのである。今回、日本への対策も万全と自信満々だった。
対策の目玉は三苫を止めることだったようで、本来はセンターにいる選手がサイドバックとなって三苫と対峙。今回、三苫は仕事をさせてもらえなかったね。あの三苫が止められるっていうのは、それはDFが世界レベルということでもある。
しかし、別に守備を固めていたばかりではない。アジアで日本相手にバックラインをあれだけ上げてくるチームは初めて見た。普通なら無謀な作戦というものだが、バーレーンは見事にその戦略を実現して、前半は日本の攻撃をほぼ完璧に無効化した。取り消しとなったゴール以外は、シュートが枠にも飛ばない。
日本のベンチもDFラインがあれほど上がってくることを想定していなかったようで、アジアでのいつもの戦い方のように、久保や三苫のドリブル突破という個人技に頼るだけ。せっかく左SBにロングフィードの名手伊藤を配置したのに、宝の持ち腐れである。何で伊藤を先発に持ってきたのか、訳が分からんね。さすがに後半になって、DFラインの裏を狙うロングパスが出るようになったがね。
でも試合展開によっては、もう遅いということにもなりかねなかったと思う。なぜなら、0-0だったからバーレーンは前半と同じように勝ちに行く戦法を取った。でも、これがバーレーンのリードなら、DFは少し下がり目になったかもしれないからだ。つまり、昨夜の苦戦は、ベンチワーク、監督の違いからくるものでもあった。敗戦から学んでいるバーレーンの日本分析はすごく的確で、「刮目」しなかった日本はバーレーンをなめてかかったところがあるということだな。
しかし、いくら分析が優れていても、戦略が練られていても、選手にそれを実行できる力がないことにはどうしようもない。で、調べてみると、バーレーンの監督が就任したのは去年の2月である。監督の戦略やポリシーが浸透し、選手がその通りに動けるようになるには時間がかかる。監督はクロアチア人で、「欧州のブラジル」と呼ばれるクロアチアのハイレベルなサッカーを体現してきた人物である。その要求は相当高度なものだろうと推察できる。だから、半年前やガルフカップ以前のバーレーンはまだ選手が監督の思惑にほとんどついて行けなかったのではないか。それが、試合を重ねるに連れ、やりたいサッカーができるようになってきたということだろうと思う。
しかし、日本相手にそれを90分やりきるのは難しかったようで、後半は徐々に選手の足が止まっていったね。まずは、後半になってのロングパスの多用が相手の体力を削っていったこと、そして選手交代が的確だったことがあるな。特に最近冴えなかった鎌田が久々に「らしい」働きをしたのが嬉しい。先制点は美しかったね。上田の見事なポストプレー、久保の絶妙なパスアシスト、鎌田の鋭い突っ込みと巧みなゴール。久保の2点目もすごかったな。ちょっと前に同じような位置から右足のシュートをナイスセーブされているからね。本人も相当嬉しかったようで、ソシエダでもあんなに喜んだ姿は見たことない。やっぱり代表のプレッシャーというのは独特なんだろうな。
試合後に三苫が「アジアでは勝つのが当たり前と思われているけれども、実はすごく苦しい」と告白しているように、バーレーンのように化けるチームは今後も出てくるだろう。そしてまた、近年の日本の躍進がアジアのレベルアップを促しているのも間違いないことだろう。他国はみな日本に追いつき、日本に勝つにはどうしたらいいのかと努力してくるわけである。
今回だって、バーレーンの監督がもう一年早く就任していればもっと手強かったに違いないのである。
だから、日本もまだまだがんばらないとね。とくに板倉を真ん中にしたスリーバックは、アジアはいけるが世界では間違いなくボコボコにされると思うぞ。何とかDF陣を強化しないといけない。チェイスアンリと高井がどこまで伸びるかかな。あとは佐野海舟を呼んで欲しかったね。「ブラボー」と怒鳴るだけの長友なんか呼ばないでね。佐野は今呼ばないでいつ呼ぶのだ。
そして、主将以下「W杯で優勝する」が合い言葉のようになっている。その意気込みはとてもいいが、言葉にうるさい僕としては、その標語を変えたらどうかと僕は思う。「W杯の決勝に出る」のほうが良くないか? こっちのほうが地味ではあるけれど、ひとつひとつ階段を上っていくイメージが込められているように思うのだが、いかがだろうか? 「優勝する」は、いいけど、やっぱり大言壮語という感じではあるな。つまりホラみたいなね。でも、多くの詐欺とか新興宗教のように、人の心を鼓舞するにはそれもいいのか。
さて今週は、極寒の五島列島に行ったネタもあるのだが、紙数の関係もあり、来週に回そう。ネタは寝かして熟成させたほうが旨みが増すかもしれないしね。