言いたかないけど、暑いなあ。こうも暑いと僕の場合は呼吸に影響するのでね。でも、その呼吸のつらさもだいぶ慣れたようで、少しは睡眠もよくなったし、病院にまで行かなくてもいいかなと思える。とにかくできるだけ静かに1日を送るようにしている。
先週は金沢のことを書きたかったが、大統領選のことがあって書けなかった。で、もう2週前になるが、ゴーゴーカレースタジアムでなでしこジャパンの壮行試合、ガーナ戦を観たのだった。ガーナはひどいチームで、何の練習にも参考にもならなかったね。北川が負傷交代した分、マイナスだったかも。
たったひとつの収穫は、藤野あおばのフリーキック。あれは見事だった。ガーナ戦では、藤野はコーナーキックもすべて任されていたので、長谷川を差し置いて、どうも今やなでしこの不動のキッカーに上り詰めているらしい。他のプレーは雑だが、確かにキックだけなら世界有数のレベルである。これを生かさない手はない。ペナルティエリアのちょっと外あたりでファールを誘い、藤野に蹴らせる。そういう戦略を立てるのもありだと、僕は友人にLINEで提言している。
僕はかつてワールドカップでそういうプレーを観ているんでね。自分の得意な位置でノロノロとボールをキープし、DFが奪いに来るのを待ち、少し粘ってファールを誘う。そして、FKを得てそれを決める。世界にはそういう選手もいる。なでしこのFWは強国相手には通用しないから、藤野のFKは何よりの武器となるだろう。
と思っていたら、昨日のスペイン戦で藤野が決めた。ガーナ戦のもすごかったが、それよりも更に見事だった。あのキックを求めて、世界のビッグクラブが争奪戦を繰り広げるのではないか。
しかし、昨日の試合、見せ場はそこまで。世界No.1、スペインに蹂躙されて終わった。フルボッコとはまさにあのこと。強い、強すぎる。女子のフットボールであんなチームが創れるものなのか。去年のW杯優勝時よりも強い。
しかもサイドバック清水が負傷。たぶんもう出られないのではないか。金沢のとき、期待の谷川萌々子は、試合前のウオーミングアップでも、独りボールを抱えて皆の練習を観ているだけだった。五輪では谷川の姿は見られないと悟った。長谷川の代わりが務まるのは谷川しかいないのに。北川もこの試合でつぶれたから、18人中3人は使えないようだ。ここからキーパー3人を引くと、フィールドプレーヤーは12人しかいない。なでしこピンチ! 千葉とか守屋とか、この舞台では無理。清水のいない穴は、高橋じゃなく清家で埋めるのがいいと思うぞ。高橋を使って、熊谷と並べるのは自殺行為というものである。
一方、男子は意外や意外。南米チャンピオンのパラグアイに5ー0の大勝。いくら向こうが10人になったとは言え、明らかに日本のほうが強かった。このチームは、今大会唯一オーバーエイジがいないし、怪我人続出なのにねえ。わからんもんだなあ。まあ、オリンピックだから南米は弱いんでしょう。でも、ヨーロッパは違うよね。とくにフランスなんて怪物揃いだ。日本は、最後の強化試合がこのフランスだったのが良かったのではないか。それがなでしことの大きな違いだ。ちなみにフランスの五輪監督は、あのアンリである。
なでしこはこの半年、北朝鮮を除いて、強いチームと試合をしていない。だからいつまでも、熊谷や高橋を使い続けてしまうんだろう。要するに、過保護な育て方をしているとろくな事にならないということだな。思い出してもみよ。W杯でスペインやドイツに勝った男子サッカーは、大会前の強化試合で強豪アメリカと実にハードに渡り合い、それによってチームの戦法やかたちを見出すことができた。世界と戦うにはどうしたらいいのか、あの森保もやっとちょっぴり理解したのだった。これに比べ、なでしこはユルすぎたね。
さて、金沢の強化試合では、石川県出身の北川ひかるが先発するのではというのがもっぱらの予想だった。実際そうだったのだが、実は、この北川、金沢の小学校を卒業後に、福島のJFAアカデミーに行っている。JFAアカデミーとは、日本サッカー協会のエリート育成チームのことである。その翌年、東日本大震災で被災し、アカデミーは静岡に移転。そして、今年13年ぶりに福島に戻った。つまり、北川は東日本と能登、ふたつの災害と深いかかわりがある。そういう選手が、今年の正月に大地震が起きた石川県での代表戦に出場することはとても意味のあることだった。
昔、神戸の被災地を歩き、ある避難所で会ったおばあちゃんは、福井の大地震と阪神とどちらも経験したと言っていた。福井地震? 調べてみると、1948年のことだった。そこから約50年前。われわれの感覚で言えば、あのとき神戸に住んでいて、あのときには仙台に住んでいたということ。そういう人は滅多にいないだろう。
こんなことを書くのも、今回の金沢ではサッカーだけでなく、被災地にも行ってみようと思っていたからである。原発のある志賀町だと金沢市内から車で40分くらいで行ける。もうあれから半年過ぎたが、途中、道路などの補修工事がよく見受けられる。志賀町に入ると、いまだ屋根にブルーシートがかけられている家がけっこうあった。保険に入っていなくて直せないのか、行政の順番待ちなのか、その辺はわからない。でも、思ったよりも「被害」の爪跡はなかった。もっとも僕がかつて、神戸や東北の被災地を訪れたのはⅠヶ月後くらいだった。半年も経てば、あらかたきれいになるのだろう。
この先、輪島や珠洲などに行けばまた景色は違うのかもしれないが、今回はこのあたりまでとなった。それにしても、金沢から被災地まではそう遠くない。地震発生後、知事は数十日も現地に行かなかったと言うが、これしきのことができないほど多忙だったのだろうか。輪島や珠洲までは志賀町の倍の時間くらいで行けるし、ヘリコプターでも使えば10分程度のことだろうに。げに、いくつかの知事たちの精神世界を理解するのは骨が折れる。