高市政権の支持率は82%と、ご祝儀だけではなさそうな人気を呈している。まだ何もしていないけれども、石破と比べたらマスコミへの出方が派手だもんね。しかし、中国領事の過激発言に対しては静かな対応だな。「台湾有事」なんて言うんじゃなかったと思っているのかどうか、それも分からない。
中国ではこういったサイコパスみたいな政治家がよく見受けられるけれども、完全なるサイコパスではまったくなくて、習近平が喜ぶんじゃないかという思惑がつねに根底にある。今回はどうなのか? 2年前、「戦狼外交」などと呼ばれていた中国外務省の報道官、趙立堅が突然左遷されたこともあったしね。自国の為と思っていても、中国のイメージを損なうと判断されればクビが切られるわけだね。
同じように高市首相の発言がどのような文脈から来ているのかといえば、一も二もなくトランプとのかかわりからであろう。先日、トランプと会談した際、トランプから要請されたか、少なくとも合意、容認という練り込みが完了していたことは間違いないように思える。何しろノーベル平和賞に推薦するなどと言っているくらいで、これが本気ならば無類のトランプマニアということになるし、そうでなくとも、「有事」発言はトランプのお墨付きであり、中国領事と同じように、自分が帰属する権力者に喜んでもらおうという思惑があるのではないか。
とにかくこの発言を喜んでいるのはアメリカだよね。中国の敵意を日本に分散できるしね。
高市発言が日本及び世界的な状況の中で、正解なのかどうか、吉と出るか凶と出るかは分からない。しかし、問題はその文脈にあるのではないか。彼女が傾倒するように、トランプ政権はそこまで安泰なのかどうか? 最近の米国内の選挙では反トランプが甚だしいし、次のアメリカ下院の選挙では民主党の勝利が有力視されているのではないか? その辺の読みはどうなのか? ロシアや中国とは違い、民主国家での独裁者は短命に終わるほかはないのではないか。
彼女を取り囲むタカ派的な言説は別にして、経済の立て直しを標榜することでこの政権は一般的な人気を博しているらしいのだが、「有事」を掲げて防衛費を増大するならば、経済の立て直しなどほぼ無理なのではないか。あちらを立てればこちらが立たないのである。
というのも、憲法9条があることによって、戦後の日本は、国家予算の中で軍事費を抑えることができたという事実がある。そのような縛りがあったからこそ、戦後の日本は、驚異的な経済復興と発展を遂げることができたのではないか。日本国憲法は他国に押しつけられたものであることに間違いはないが、しかし、もしも自国で制定していたなら、このようなものはつくれなかったであろう。憲法の表看板は「平和を守る」ということなのだが、実は「経済を守る」という役割も果たしてきたわけである。だからそれを軽視して軍備を増強しようとする政治家は、「経済優先」を約束できないということになる。まあそれに軍備の増強とはいっても、いつもアメリカの不要品を買わされるだけのことだしね。
政治の話は気分が暗くなるばかりだなあ。できるだけしたくないんだけどね。
ということで、先週は取り上げる余裕がなかった話題をひとつ。
26年前の殺人事件が解決。愛妻を殺した犯人が逮捕という事件だ。 26年前、3歳の子どもがいる前での殺人。犯人はわからず、しかし、ご主人はあきらめずに捜索活動し、それが実を結んだ。
犯人はご主人と高校時代の同級生、ご主人に片思いしていたが拒絶され、卒業後大学時代にも再度断られる。その20年後に同窓会で再会、その5ヶ月後に事件が起きる。多くの人がこの犯人に対して理解できないと言うようだが、僕のような仕事をしているとさほど珍しくはない。このような執着の強い人は多いし、ストーカーというのは大概こういう人物である。おそらく、ご主人は気づかなかったろうが、駅とかさまざまな場所で物陰から見られていたのではないかと思う。
注目を引くのは殺意が妻に向けられたことだ。ときに犯人の年齢は43歳。
昔、タイの諺みたいなものにこういうのがあるというのを読んだことがある。男に裏切られたとき、
20代の女は、自殺する
30代の女は、相手を殺して自分も後を追う
40代の女は、相手だけを殺す
要は年を取るごとに自分は悪くなくて、相手が悪いと考えるわけだが、この事件では「相手の妻を殺す」となる。タイの諺にはない選択肢だ。タイの諺はまだ浅い。
凶器となった刃物を持ち込んだというので、最初から殺意があったと考えるのが妥当だ。たぶんだが、あらかじめ下調べがあって、妻の様子は観察されていたことだろう。子どもと戯れたりする妻の幸せな様子を見て、あるいは夫も交えた仲のよい夫婦と親子を見て、嫉妬と憎悪に火がついたということかもしれない。
小さな子どもが殺されずに残された意味は、よくは分からない。妻を刺しているうちに自分も負傷してしまったので、もう子どもを殺める余裕がなくなったのかもしれない。もしも、妻だけを殺すという計画であったならば、諸悪の根源はこの女(妻)だという考えに縛られていたのかもしれないし、あるいはどうしたら相手がいちばん苦しむのかということも考えていた可能性もある。そのあたりのことはよく分からない。
けれども、肝心なことはそんな事件ファイルのことではない。犯人逮捕に至るまでのこのご主人の努力、粘り強さである。長年、駅前などで情報提供を請うチラシを配り続け、犯行の現場を残すために約2000万円をかけてアパート代を払い続け、時効の延長に尽力する。この人はすごい。
結果、その努力が実を結んだわけだが、しかし、いちばんの決め手は事件の担当者が代わったことのようだ。昨年捜査担当者が代わり、捜査方法、方針が変わった。事件で名前が挙がった者全員にDNA鑑定を要求。任意ではあったものの、これを拒否した者に焦点を当てていって犯人にたどり着いたのである。もっと早い段階でやっていればと思うが、結局、担当が誰になるかで局面は大きく変わってしまうということだな。病院でも主治医によって当たり外れがあるよね。それと同じ。明智小五郎ではなく、最初からコナン君にやってもらえればいいんだけど。
でも、このご主人の粘りがなければ、捜査自体が終了していたはずなので、やはり殊勲者はこのご主人ということになる。ご本人のインタビューはもちろん、当時目の前で母親を殺された息子さんの受け答えもなかなかだったなあ。男親ひとりで、事件解決への尽力をしながら仕事も頑張り、子どもを育てる。子どもを見ればこの人がどれだけの人物かも分かるというものだ。
大谷翔平の二刀流も立派だけど、この人の26年はもっとすごいなあと思う。政治の世界にはまったくいなさそうだが、市井にはこんなすごい人材がいるんだよねえ。こういう人を重要な役職に迎える会社はないものだろうか。
