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ハコフグの島

 桜が開き始めている。家の近くでは木蓮と桜(ソメイヨシノ)が開花を競い合っているようだ。木蓮よ、少しでも注目を浴びたいならば、桜よりも早く咲いたほうがいいぞ。銀座でも早咲きの桜が週初めから開花しているが、この暖かさならソメイヨシノもほどなく満開となるだろう。

 鍛冶橋通りの椿の花の色はショッキングピンクだったが、すぐ近くの昭和通りの椿は赤と朱色の間のような色である。椿もいろいろだ。先週行ってきた五島列島も椿がウリで、大きな椿がたくさん植わっている。僕らが見たのは普通の赤い椿だったが、どうも10から20くらいの種類があって、色も白っぽいのから赤へのグラデュエーションとなっている。椿油は島の大事な産業である。これは伊豆大島も同じ。都はるみの「あんこ椿は恋の花」で有名ですね。でも、昔と違って椿油の需要はとても小さい。だから、伊豆大島では、目玉料理として椿油を使った串揚げやフォンデューみたいなのがあったりして、必至の挽回を計ってはいるが、五島の福江島ではそういうのは見当たらなかった。しかし、満開のときに来ればまずまずの目の保養となるかもしれない。

 友人、知人がいる関係もあって、長崎にはたぶん10回は行っていると思うのだが、五島は初めてだった。長崎から飛行機で約20分、船(ジエットフォイル)だと90分。連絡の関係で飛行機にしたが、聞いていたものよりも大きい。40人から50人乗りのプロペラ機で、YS-11よりもちょっと小さいくらいか。飛行時間は短いし、かなり安心だね。

 今回の日程は、日本全国が荒天で、風が吹きすさび、雪が降ったりヒョウが降ったりである。長崎も同様で、残念なことにキリシタン遺構を船で巡るツアーが中止となった。これが楽しみだったのにね。でも、いちばんかわいそうなのは釣り客だろう。五島はヒラマサやブリの大物釣りで有名だから、釣り客も多い。

 僕の場合は、釣りではなくゴルフである。船を使う釣りと違って、こっちは少々の荒天でもやれなくはない。で、ゴルフの日に限っては、風は強くひじょうに寒いものの、雨もなく、良い天気だった。友人から五島カントリーはいいゴルフ場だと聞いていたが、確かに島にしてはなかなかである。淡路島や奄美よりも少しいいかも。多くのホールから海が見えるし、この時期としてはメンテナンスもいい。

 しかし、ゴルフをやるのが約4ヶ月ぶりで、前半はひどいのなんの、天気よりも大荒れである。もういやになるくらい絶望的な内容だった。分かる人には分かるが、スタートから+4,+3、+3、+3というとんでもないスコア。しかし、徐々に勘を取り戻しギリギリ100を切ったのだから、われながら大したものである。この根性と粘りを渋野も見本にして欲しいものだ。

 さて、五島と言えば魚である。五島牛というブランド牛もあるようだが、やはり魚だ。初日の店に入って目についたのはハコフグ料理があることだった。ハコフグを出す店なんてあるのか! と思ったら、どうも五島の名物料理らしいのだ。多くの居酒屋や割烹にあるメニューのようだった。

 それは、ハコフグの味噌焼きという、チョー珍しいものである。そもそも普通の人はハコフグの存在も、その味も知らないに違いない。僕はたまたま昔トカラ列島で、その日獲れたというハコフグの塩焼きを食べたことがあって、すごい美味であることを知っている。

 で、この「味噌焼き」のインパクトがすごい。カニ料理で言えば、カニの甲羅をつかった焼き物とか煮物とかあるでしょ、それをハコフグでやっているわけ。ハコフグっていうのは、真四角なかたちをしたフグなの。ああそうだ、あのさかなクンがかぶっている帽子がハコフグだったな。ハコフグの味噌焼きは、背が開かれたハコフグの容れ物の中に、ハコフグの味噌煮込みが入っているという代物である。まあ、驚きの料理。味は正直言って塩焼きのほうが美味いと思うけど、こんな料理が食べられるのは日本全国ここだけだろう。

 ヒラマサや鯛の刺身は普通に美味かった。また、この店には中に生け簀があるのだが、帰りがけに覗いてみたら、何と1メートル級のクエが2匹いた。うーん10人くらいで来たらクエ鍋を注文できるのになあ。でも、僕のゴルフ仲間が揃えばそれも可能か。他の店では、メニューになぜかエビマヨやエビチリがあった。ふと思いついてエビマヨを頼んだのだが、このエビがものすごく大きくて美味い。地元で獲れるから、エビマヨもこんなに美味い。次に来たときはエビチリも食べてみたいものだ。

 島巡りは行けなかったが、列島最大の島である福江島だけでも見所はあるぞ。まずは街の中心部にある石田(福江)城跡だ。フェートン号や黒船の来航によって外国の脅威を感じた幕府が、海防のために築城を許可した、日本の最新の城。しかし、完成したのが明治維新の5年前で、9年後には廃城となった。本丸跡には県立五島高校が建設されたのだが、たぶん日本でいちばん立派な門から入る学校である。

 城の横には観光歴史資料館があり、五島や福江島の歴史を知ることができる。ここもまずまず見応えがある。

 そして、この城の周りをたくさんの武家屋敷が取り囲み、その石塀が今も残っている。これがなかなかすごい。一部は火事でなくなったということだが、「武家屋敷通り」として残っている一帯は、全長400メートル、たとえば萩の屋敷通りよりも迫力がある。五島列島は火山列島であり、福江島の鬼岳のよる溶岩を石垣として多用できるという利点もあるのだろう。石でできていて、しかも高い塀なのである。外敵との戦いということが十分に意識されたものだな、と感じる。

 また、この通りの一角には、五島が生んだアニメ作家、山本二三の美術館がある。ジブリの名作「ラピュタ」「もののけ」などの美術監督で、僕は知らなかったのだが、彼がいなければジブリ作品は成り立たなかったと言われるほどの人物であるらしい。ジブリファンなら必見といったところか。

 キリシタン関係でいうと、堂崎協会というところが、きれいで貴重な資料もたくさん展示されていてよかったね。ここへは市内から公共バスで行けるのもいい。他には島の西端にある大瀬崎灯台。ここの景観は、去年行った山口の元の隅神社よりもすごい。孤高の灯台という感じ。天気のせいもあるが、とてもじゃないが、車を降りて灯台まで歩く気になれない。他、きれいなビーチもいくつかあるのだが、天気が悪かったのでイマイチだった。

 結論。長崎行くなら五島に行ったほうがいい。

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