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いつまでも若く

 先週末の夜中、サウジカップという世界最高賞金レースの中継があった。この日は”サウジカップデイ”とされ大きなレースが6つある。その中でも最終のサウジカップは1着賞金15億円と桁外れ。日本馬では過去にパンサラッサという馬が優勝しており、レースとの相性はいい。

 今回日本の期待はフォーエバーヤング。あのケンタッキーダービーにも挑戦して、不利がなければ勝てたのではというくらいの実力馬である。強敵はダート競馬初参戦の香港馬ロマンティックウオーリア。香港はもちろん、世界的な名馬と言えるすごい馬だ。

 さてレースは、フォーエバーヤングが逃げて最後の直線に。ここで外側からロマンティックウオーリアが強気にまくってきて、先頭に立ち、ぐんぐんと加速。あっという間に1馬身以上の差がついてしまった。ゴール板までは200メートルくらいか。さすがのフォーエバーヤングももはやこれまでと思ったのだが、人馬ともにあきらめることなく、ロマンティックウオーリアの外から再び追い出しにかかる。すると、何ということか、絶望的と思われた差がジワジワと詰まっていき、ゴール前ではクビから半馬身くらい先着、信じられないような勝利を飾った。この2頭以外ははるか後ろのマッチレースだった。

 いやあびっくりした。こんな勝ち方をみるのは初めてと言ってよい。たいていはあそこで勝負が決まるものなのである。今や日本の馬はほんとに世界的だな。フォーエバーヤング以外の日本馬の活躍もめざましく、この日あった大きな6つのレースのうち、4レースを日本馬が制した。

 フォーエバーヤング、名前がいいよね。何といっても僕の場合ではボブ・ディランの名曲として印象深い。でも、僕からしたらボブ・ディランの中でも「フォーエバーヤング」は後期のほうなので、実は馴染みが薄い。やっぱり「ライクアローリングストーン」のような初期の曲のほうが馴染みがあるんだよね。

 ボブ・ディランの初来日は1978年。なんで来ないのか不思議なくらい、待ちに待った初来日だった。あれからもう45年以上経つのか。武道館のアリーナのいい席で、感動に包まれて聴いたなあ。で、他の曲がどんな音でどんな歌声だったのか覚えていないのだが、この「フォーエバーヤング」のステージだけは、すべてが記憶に刻まれているのだ。不思議だなあ。10代の頃散々聴いた数ある名曲もみんなやったはずなのに、それは覚えていない。この記憶の事実はもう45年くらい謎のままである。解明はできないだろう。でも、それはいい。その名が思いもかけないかたちで再び自分の中に刻み込まれたことをうれしく思おう。

 音楽といえば、先日、以前にTCCでも仕事をしていたA君と飲む機会があった。僕の手術の頃には辞めていたので、5年ぶりくらいの再会である。あっ、年齢的にはA氏と言ったほうがいいな。

 A氏は変わり種というか、才能あふれる人である。随分前にこのコラムでも話したかもしれないが、アマチュア時代に出していたレコードが、ひょんなことからヨーロッパで話題になり、その人気から逆輸入のかたちで日本でCDデビュー。TCCにいる頃には、2枚目を出していたが、今回5年ぶりに会うと、2枚のCDをプレゼントされた。つまり、計4枚のCDを発表している。臨床心理士との見事な二刀流だ。こんな人他にいないよね。僕も競馬作家との二刀流ということも一時期あったんだけど、雑誌の廃刊などでしょぼってしまった。

 ああ、昔北山修氏がいたな。でもあの人は医者だし、音楽が先だったからね。まあしかし、思い返せば、骨のある人だった。もう長い間会うこともなくなっている。今はどうしているのだろうか。昔、カラオケで関西のT氏と二人で、北山さんの目の前で散々フォークルの歌を歌いまくり、しまいには嫌がられたことが懐かしい。

 さてA氏との飲み会もほんとに楽しいものだった。僕の場合、こういう機会そのものがほとんどないんでね。外食するのも、酒を飲むのも今年初めてのことだ。場所が中野というのもよかった。僕は、武蔵野市で生まれた、中央線文化の人間なもので。若い頃、中野のブロードウェイで飲んで、散々酔っ払って、アーケードの端から端まで寝転がって駅まで行ったことがある。

 ひどいね。若気の至りとは言え、ひどい。断罪されるべき所業である。まだ未成年で、何もしていない、無意味な日々を過ごすプータローだったな。ボブ・ディランをいちばん聴いていたのもあの頃だった。

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