もしエイミー・ワインハウスが生きていれば、その後のレディガガの一人勝ちもなかったかなあと帰り道に思った。エイミーは28歳で死んだが、さしたるレジェンドにはなってないからね。26,7で死んだジャニスは50年経った今も伝説だが。
アレサ・フランクリンの伝記映画「リスペクト」だが、アレサが30歳の時の教会コンサートのシーンで映画は終わる。アレサのキャリアはここから40年以上あるのだが、そちらは字幕の解説のみだ。では見応えがないのかというとそんなことはない。上映途中、上映後、何度も身体が打ち震えた。たぶん細胞が10万くらいは死んだのではないか。結局、この教会コンサート以降、アレサは30歳にして生ける伝説となっていたのだな。
正直、途中までは「ドリームガール」のような感じを受けていたのだが、見終わると、この映画はアレサへの愛と敬意(リスペクト)にあふれまくったものだなと感じる。「リスペクト」のタイトルには何重かの意味が込められているのだ。
この映画をここまでのものにしたのはひとえにジェニファー・ハドソンの奮闘、熱演である。客観的な評価として、その歌はアレサには及ばないが、声質までもアレサに寄せようとした努力がうかがえる。それってすごく難しいと思うよ。ただし、その声質はあくまで綿100%という感じ。アレサの声はもっと絹に近い。
けれども、お世辞にもスタイルがいいと言えず野暮ったいアレサを演じるのだから、ビヨンセやメアリー・J・プライジには到底無理である。この2人はポップだからね。クィーンオブソウルにはなれない。で、ここはジェニファーしかいないのだ。アレサが指名するのも当然だった。
で、すさまじい熱演、歌唱と言えるね。ただし、アレサを知るものとしては、贅沢にもほんの少し物足りなさを感じていたのだが、最後の教会でのシーンにはやられた。ここまでやってくれれば文句はないね。アレサも草葉の陰で喜んでいるだろう。この映画でジェニファーはさらなる高みに駆け上がったな。昔「アメリカンアイドル」のベスト4で落ちて、ものすごくふてくされていたのが懐かしい。
帰り道、今夜も行こうか、それとも明日にしようか、席はどこでもいいなとか考えた。「観る」と言うより「聴く」映画だよね、これは。だから席はどこでもいいの。目をつぶっててもまあ同じ。毎日極上の音楽をライブ感覚で聴けると思うと、1000円ならすごく安い。障害者割引だとシニアよりも100円安かったのだ。