傾聴技法 その3:パラフレーズ
傾聴技法
このコーナーでは、管理職の方が部下から相談を受けたり、ご家族やご友人と話し合ったりする際に有効な、傾聴技法を中心にした知識や実践上のポイントをご紹介します。
今回は、パラフレーズについてご紹介します。パラフレーズとは、ご家族や部下の感情だけではなく、相手の体験や考えなどを含んだ話全般について、それらを適切に言い換えて、言語を用いてフィードバックすることです。
そうすることで、誠実に、そして正確に話を理解しようと努めていることが相手に伝わり、ご家族や部下との信頼関係が増すと共に、相手が自分の話を整理し、気づきを深めていくことができるという効用があります。
管理職のMさんが、単身赴任中の以前の部下、Nさんから相談を持ちかけられた場面を例に挙げてみます。下線部がパラフレーズを行っているところです。
N:「すみません、お待たせいたしました。今日はお忙しいところありがとうございます」
M:「何だい、折り入って、相談て?」
N:「実は、息子のことなんですが・・・」
M:「息子さんって、高校2年生だったっけ?」
N:「そうなんです。あいつが、急に高校辞めるって言い出したんですよ」
M:「ええ!、彼が高校辞めるって言い出したって?」
N:「そうなんです。部活も、私が単身赴任中に辞めちゃって、ちょっと気になっていたんですが、とうとう、そう来たか、って」
N:「そうか。君も、彼が部活を辞めちゃってから今後のことを気にしていたんだよね・・・」
M:「そう、心配が的中しちゃいまして・・・」
N:「心配、的中か〜」
以下、省略。
パラフレーズのポイントは以下の通りです。
1.基本は、ご家族や部下が使っている言葉を用いながら、「あなたは〜と言っているのですね」とフィードバックすることです。
しかし、使っている言葉をすべてそのまま使うような、“おうむ返し”でフィードバックすると、不自然になることがあります。“適切に言い換える”と述べたように、適宜、同義の表現に言い換え、フィードバックします。
2.日本語は、特に会話において、主語が曖昧になっていることがあります。タイミングをみて、「あなたは〜と言っているのですね」と意図的に主語を明確にしてフィードバックすることは、ご家族や部下が自身の体験や感情、考えを他者のそれと分け、自分の話の内容を明確に意識する支援をすることが大切です。
よろしければ、日常生活のなかでこれらのポイントを確かめていただけましたら、幸いです。