傾聴技法 その7:相手が取り組みやすい問題を明確にできるような働きかけ方

このコーナーでは、管理職の方が部下から相談を受けたり、ご家族やご友人と話し合ったりする際に有効な、傾聴技法を中心にした知識や実践上のポイントをご紹介します。

今回は、相手が取り組みやすい問題を明確にできるような働きかけ方について、ご紹介します。
誰しも、目の前に大きな問題が現れたときには、解決までの途方もない道のりに圧倒されそうになる体験をしたことがあるのではないでしょうか。特に、部下が問題に圧倒されそうになっているときには、問題を区分けし、彼らが取り組みやすい問題に注目して、解決のために行動していくように導くことが、重要です。
次の事例は、上司のMさんと先日異動してきた部下のNさんが打ち合わせしている場面です。Nさんは、これから担当する業務に不安を抱えていました。

N;「(業務に関するレジュメを見ながら)これで、すべてでしょうか。う~ん・・・。かなり複雑ですね。覚えるだけでも時間が掛かりそうです・・・。正直に申し上げて・・・、すぐにできるかどうか、不安です」
M;「そうだよなあ、前任者も、四苦八苦していたからね。君が不安なのもよく分かるよ・・・。確かに、すぐに全部理解して、作業が進められれば理想的だけど、それはかなり大変だよな。そうしたらまず、例えば全体をいくつかに分けて、部分的に取り組んでみるというのはどうだろう?
N;「はい。実は、M課長がご説明くださっているときに、自分なりに5つの作業に分けて考えていたところだったんです」
M;「おお、そうか、頼もしいね。どういうふうに分けることを考えていたの?
N;「そうですね(図を描きながら)、この部分で1つ、残りは、隣の部署との連携作業なので、そちらとも打ち合わせが必要かと思いますが、こちらは4つに分けて・・・」
M;「なるほど、そうか。それじゃあ、この5つのなかでは、君ならどこからやってみる?
N;「この部分は前の部署で担当していたことと、共通しているところがありますから・・・」
M;「うん、どうかな、できそうかな?
N;「はい。この部分からでしたら、なんとか・・・」(以下省略)

下線部が、今回のテーマである、取り組みやすいところを明確にするために行ったコミュニケーションの部分です。Mさんは、Nさん自身が取り組みやすい問題に気づけるような質問をしています。その際、Nさんに仕事を任せるとしても、MさんはNさんの不安を受け止めつつ、“大問題”を“小問題”に分け、Nさんが自分の能力やこれまでの経験などと照らし合わせながら、取り組みやすい部分を明確化し、Nさんが「これならば、できそうだ」という感覚を得るための支援に努めています。

日常生活の中でこれらのポイントを気に留めていただけましたら、幸いです。