傾聴技法 その6:相手が困っていることに着目する

このコーナーでは、管理職の方が部下から相談を受けたり、ご家族やご友人と話し合ったりする際に有効な、傾聴技法を中心にした知識や実践上のポイントをご紹介します。

今回は、相手が困っていることに着目するための関わり方をご紹介します。

次の事例では、課長のTさんが、部下のSさんから”仕事を締め切りまでに仕上げられない”という相談を受けています。

Tさんは、Sさんの話を聴いているうちに、Sさんが“仕事を締め切りまでに仕上げられない”という背景に、“分業している同僚(Kさんら)に対して連絡や相談をせずに、Sさんが独断で仕事を進めた結果、トラブルが発生し、時間が余計に掛かっている”という問題があることに気がつきました。しかし、Sさんは、“納期までに仕上げられないのは、同僚が非協力的であるため”と認識していました。

(会話途中から・・・)

Sさん:(早口で、イライラしながら)「確かに、私はKさん達に何も言わずに独断で(仕事を)進めてしまったこともありました。でも、私は、自分が担当しているところは、ちゃんと間に合うようにやっています。彼らがマイペースというか、私が送った分を、のんびりやっているから、いつも遅れてしまうんです」

Tさん:「そうか。Sさんとしては、自分が送った分をKさん達がのんびりやっているから、遅れてしまうというわけだね

Sさん:「そうなんですよ。こういった状況がずっと続いていますから・・・、参っています・・・」

Tさん:「うん。それは、うんざりだろう。君が真剣にやっていることは分かっているよ。そういう中で、君はKさん達に粘り強くつき合ってきたのだろうね。これまではどうやってきたのか、もう少し詳しく教えてもらえるかな?

Sさん:「はい」(表情が和らぎ、落ち着いて話し始める)以下、省略。

下線部のところで、Tさんが、Sさんが困っている内容に着目しようとしているがお分かりになると思います。前述のように、Tさんは、Sさんが同僚に独断で仕事を進めるという“問題”に気づいていました。また、やり取りからは、Sさん自身も自分の問題に気づいている様子も見受けられます。しかしSさんの“イライラしている”雰囲気から、「(Sさんが)すぐに自分の問題を認め、解決することはできないかもしれない」、とTさんは考えました。そこで、Tさんは、Sさん自身が困っているということに先に着目し、Sさんの認識を尊重することで、TさんとSさんとの信頼関係を築くことに専念しています。これによって、Sさんが自分の問題に取り組めるように導くことが可能となっていきます。

日常生活の中でこれらのポイントを気に留めていただけましたら、幸いです。