菅野所長のエッセイ:両雄並び立たず


W杯、やはりフランスの優勝に終わった。でも、フランスの2点目、あれはなかったな。VTR導入に僕は反対ではないが、悪い影響を及ぼしたことも否めない。あれがなければ、クロアチアはもっと肉薄できたと思う。
まあ、しかし、なかなかいいW杯だった。日本が健闘したことは大きな要素だが、ベルギー対ブラジル、ベルギー対フランスという、どちらも決勝戦のような試合を観られたのは喜ばしい。大会を通じて光ったのは、アザールとエムバペか。
ネイマールは過剰演技と散々こきおろされたが、ネイマール自身の出来は決して悪くなかった。ただ、よほどのことがない限り倒れず、デフェンスを抜き去っていくアザールとの比較において目立ってしまったところもあると思う。あとは、スアレス、カバーニの2人も素晴らしかったね。
メッシは、いつものことだが、代表では生きない。でも、ナイジェリア戦だったか、後ろからのボールを左太腿で小さくトラップし、それを足で前に落とし、利き足ではない右足で蹴りこんだあのゴールはメッシならではだった。
同じくC・ロナウドは、ワンマンチームの悲しさで敗退したが、スペイン戦でのFKはあいかわらずとんでもなかった。

予選敗退したが、韓国のFWソン・フンミン、19歳のGKチョ・ヒョヌの2人は、日本選手と違って世界のトップレベルだ。ソン・フンミンは兵役を逃れられればまだやれるし、韓国は向こう10年GKは安泰だろう。また一からチームを作り直す必要のある日本にとっては相当手強い。予選が別組になるだろうからそこはいいのだが。

エムバペにはほんとに驚かされた。薄い記憶をたどれば、体格といい、走るフォームがペレと似てるんだよね。まだ19歳。移籍金の新記録をつくるのは間違いないところだろう。サンジエルマンは獲得に190億使ったが、300億でもオファーは来るだろう。アザールもまだチェルシーとの契約は残っているが、レアルに行くだろう。クリロナの穴を埋められるのはアザールくらいだし。

ところで、W杯は終わっても楽しめるのがYUチューブの「ネイマールチャレンジ」。いまや世界中に拡散して大ブーム。これは必見、爆笑必至である。

 
で、W杯は終わっても、それにかぶりつつ進行していたツールは佳境に入っていく。前半折り返し、水曜の11ステージ(山岳、難関)はすごいレースだった。残り10キロくらいから、ニエベが抜け出し、スイスイと逃げを決めていく。このとき絶対王者チームスカイはまだはるか後方。6人でトレインを組んではいるが、どうもピッチが上がらない感じである。
おいおい、ニエベは去年までチームスカイだったよな? なんでスカイは手放したんだろう?  とか思っていたら、徐々にペースアップしたメイン集団も人数が減っていき10数人に。いつの間にかスカイも第2エースのゲラント・トーマスと王者クリス・フルームの2人である。そして、残り6キロでG・トーマスがアタック。フルームが出ないので、他の選手もこれを即座に追うことができない感じでいる。
で、あれれと思ったのは、この後フルームはトーマスの援護をするかのように他選手のチェックを繰り返すのである。あれー、今回トーマスが、フルームに成り代わって実質的なエースになっているという噂があったが、あれは本当だったのか? そういえば、このレースでも、前半フルームが二度落車したのだが、いちおう一人が助けに来るものの、チームとしてはペースを落とさなかった。そのとき、今回はやけにフルームに冷たいと感じた。絶対王者にも来るべきときが来たのかもしれないと。

残り4キロ、第2集団に追いついたトーマスだが、ここにいた強力なライバルのデュムランとともにニエベを追う。メイン集団では、アタックをかけたダン・マーティンに乗っかってフルームもアタック、他の強豪たち(バルデとかニバリ)はこれについていけず脱落。フルームとマーティンは協調して先を追いかける。
残り1キロ、ニエベ先頭。残り600M、ニエベ先頭、やや逃げ足に翳りが見える。20秒後にトーマス、デュムラン。何とその数秒後に、マーティンを競り落としたフルームも来ている。ちなみにロードレースの20秒というのは相当の差なので、登りといえども600Mくらいでこれを抜くのは難しい。これはぎりぎりニエベの逃げ切りかと思っていたら、トーマスが猛スパート。あれー、こんなの見たことないというスピードでニエベに迫る。残り600Mあるのに、300Mで抜き去ったのだ。信じられない、アンビリーバブル! あとは一人旅、と言うほど長くもないが・・・とにかく楽勝。これも驚異の追い上げのフルームが2着に上がったと思ったら、最後はデュムランに差し返され3着。
トーマスの強さが際だったレースだった。レース後インタビューでは「エースはフルームだ」と言っていたが、いや、どちらが強いかわからんぞ。あの最後の鬼脚を見たら、今ならトーマスのほうが上だろうと、誰でも思うだろう。あとはチームの考えひとつだな。
で、次の日も優勝を占う重要な12ステージ。山岳の厳しいサバイバル戦。残ったのは、トーマス、フルーム、ディムラン、バルデの4人。最後の数百メートルはまるでスプリントのような勢いでやはりトーマス。もう登り最強。山の王者。フルームは4位。
フルームが勝つには、約100キロのダウンヒルがある15ステージ、超難な下りのある16ステージでの挽回しかない。しかし、これは最近のフルームの得意技なので、まだわからないのだが、チームの指示はどう出るのか? もはや完全に「両雄並び立たず」という状況になっているのではないか。