菅野所長のエッセイ:ロードレースの品格


先週はこのコラムのことをすっかり忘れてしまった。忙しかったせいだと思うが、暑さボケなのかもしれない。でも、梅雨明けからは湿度が若干下がったようで、幾分楽だよね。来週は松山に行くのだが、やっぱり暑いんだろうな。それで、ここのコラムはお休みです。

例によってさえない日々を送っているわけだが、毎晩ツール・ド・フランスがあるのが救いだ。もう終わっちゃうけど。
ある夜観ていたら、ポーという小さな町を通過していた。「ポーの一族」とはここから取ったのかと思ったが、ウクライナにも同じ地名があるらしく、どうもそっちが本命らしい。まあどっちでもいいのだが、そんな明くる日、本屋に寄ると萩尾望都「ポーの一族」が40年ぶりに復活し、単行本となっているのを発見。さっそく購入し読んだが、昔のようなインパクトはなく、絵もあまりうまくない。もっと上達したり練れていくものなんじゃないの? なんだか山岸涼子みたいで少しガックリ。

ツールのほうはあと数日で終わるのだが、序盤からずっとアクシデントが多すぎて多少興味はそがれるところがあるという印象だった。バルベルデ、サガン、ポート、先日はスプリント王のキッテルと、有力スター選手が軒並みリタイアしていくんだもん。

それでも、ここ数日は面白いレースが続く。総合の有力候補が絞られてしまったことで、むしろ深謀遠慮なかけひきがなくなり、エース同士のガチンコ勝負となっている。本命フルームにバルデ、ウランが真っ向から立ち向かう様は最高にスリリングである。いっときフルームからマイヨジョンヌを奪ったアルだったが、ここへ来て勝負所での争いについていけないレースが続き、もはや圏外に去った。18日目の山岳ステージを終えて、首位はフルーム、20数秒差遅れでバルデとウランが続く。
賞賛すべきは、フルームのアシストをしているランダ。前半は目立たなかったが、後半はクヒヤートコウスキーに代わって大活躍。自身も総合4位につけている。ジロを完走した選手の中では唯一の活躍かな。それに大感謝のフルームは、ランダにも表彰台に登って欲しいということで、18ステージでは自分を置いてっていいと、ランダに勝ちに行かせたほどだ。

こういうのも含めて、自転車レースというのはほんとに品格のあるスポーツだなあと感心する。有力選手が何らかのトラブル(集団落車とかメカトラ)で遅れたときなどは、その選手が戦線に復帰するのを他の選手は待っていたりとか。明記されたルールではなく、そうした暗黙のマナーが大事にされるのである。
今回では、あるステージで王者フルームがメカトラに見舞われ、後ろのチームカーを呼ぶために手を挙げたとき、そこをついてアルが猛然とアタックしたことがあった。他の有力選手もそれを追い、フルームはあっという間に後方に置かれた。しかし、追いついたリッチー・ポートがアルを制して、ペースをゆるめ、フルームが追いつくまで皆で待つことになった。当のアルは、いたずらをして怒られた飼い犬のような体できまり悪そうな感じになり、追いついたフルームの横について走っていたが、どうもフルームが許した感じはなかったな。
こういうのも実はルールで定められているわけではない。しかし、彼らの間では卑怯なやり方ということになるのだろう。ああ、もう、こういうところをあの政治家連中に見せたいものだな。レースの始まりから終わりまで、6時間くらい正座させて。

そういえば、金曜19ステージでは、Jスポーツの放映にくまモンが登場するらしいぞ。何でもフランス観光大使なんだそうだ。