菅野所長のエッセイ:人はなぜ彼をキングと呼ぶのか


 

先週末は長崎に行ったわけだが、往きの飛行機がなんとあの、キング・カズこと三浦知良(横浜FC)と一緒だった。 羽田に着いたあたりから、黒いジャージ姿の人たちが目に付き、搭乗口に近づくほどそれが増え、人数やその体躯などからこれは遊びのサッカーチームじゃないなとは分かったのだが、見たところジャージーにチーム名はなくて、どこなのか分からない。総勢は30人くらいか。長崎といえば、相手はVファーレン長崎だからJ2のチームだとは思った。しかし、それでもまだどこなのかわからない。半分以上の選手はマスクをしてるしね。

で、僕の席がJALのクラスJで前から2列目。その前に座ったのがどうもチームのオーナーか監督らしく(同じチームジャージーを着てたからたぶん監督)、後から入ってくる選手たちがそれに気づき、次々に「ウース」とか挨拶する。
あっ、これは横浜FCだと分かったのは、多くの選手の中でたった一人、その監督に挨拶するときにマスクを外したのが、誰あろう、キング・カズだったからである。カズはマスクを外し、ニコッと笑って挨拶。他の選手の無愛想な「ウース」とはまったく違った。 昔スタンドから観たことは何回かあるが、すぐ近くで観ると思ったよりも顔は小さくて、全体もごつくない。その笑顔はものすごく爽やか。とにかくかっこいい!の一言である。以前、東北新幹線で斜め前の席に中田ヒデを観たときとはまったく正反対の印象だ。

で、驚くべきは、感動した僕がカズの後を目を追うと、すっと奥の方に進んでいくので、他の選手と同じ普通席に座ったであろうということだ。これがすごいことだな。日本サッカー、Jリーグの立役者、キングと呼ばれ、50歳になり、海外でも注目される男が普通席。一方、僕はクラスJ。1000円違いとはいえ、座り心地が全然違うんだ、これが。
もう僕なんか、貨物と一緒でも、その辺の床に縛られ転がされてもいいから、この席をお譲りしたいと思うわけである。そんな、ひじょうに申し訳ないことをしているという気分になった。カズ様と比べたら、僕なんかゴミ虫みたいなものなのに。

これはきっと罰が当たると、乗る前に買っていた馬券も外れるのではないかと思ってしまうのもしかたない。飛行中は圏外になるのでわからず、空港に着いて分かったが、ふたつの重賞ともに当たり!堅めの決着ではあったがね。でも、罰どころか、カズが福音をもたらしたとしか思えない。ありがたやありがたやと、僕は市街へ向かったのである。

さて退職記念パーティでは祝辞を頼まれたわけだが、初めて奥様とお会いし、抑えめのバージョンでいじることにした。とは言え、それも想定内。祝辞は狙い通りの大爆笑、バカ受けの連続で、自分の経験でもなかなかないほどだった。でも、カズ様のことを言い忘れてしまったのが、手落ちだったのかもしれない。
2次会の居酒屋で、席に着こうとしたときに、暗くて段差があることに気づかず、思い切り転倒する。酔っぱらってんだよね、つまりは。これはやばいと思ったが、ちょうど上半身が座布団の上に倒れたので大丈夫な様子。頭も打ってない。しかし、左足首を捻挫である。これでは明日のゴルフは?と大心配も、足を引きづりながらプレイ。そういうことがあったせいか、日曜は馬券を買うのを忘れたが、結果を見ると予想と外れていたので却ってよかった。捻挫のほうも、これで1週間経つけど、だいたい大丈夫だね。

すべてはカズ様のおかげなのであろう。ああいう立派な人に比べ、森友学園絡みの首相夫妻、鴻池、稲田とか、ほんとはあそこの時代錯誤教育を絶賛してたくせに、関係ないと言い逃れる姿は醜いを通り越しているな。どこも同じだ、高潔な人物であるほど地位は上がらない。もっとも、ただの選手として、あるいは、普通の人として、そして市井の人として生きるほうがいいと思っているからでもあろうが。 市井の人といえば、先週取り上げた「この世界の片隅で」が、その夜に日本アカデミー賞を取ったね。「君の名は」を押さえて。まあ当然の結果と思うのだが。と、推奨した手前、ちょっと自慢げだな。このへんが高潔にはなかなか近づけない僕なのであった。