傾聴技法 その8:相手が自ら進んで取り組もうとしている事柄に着目する

このコーナーでは、管理職の方が部下から相談を受けたり、ご家族やご友人と話し合ったりする際に有効な、傾聴技法を中心にした知識や実践上のポイントをご紹介します。

今回は、相手が自ら進んで取り組もうとしている事柄に着目した働きかけ方について、ご説明します。

誰かに相談をしている人は、すでに自分自身の問題に気づいていることもあれば、問題を自覚していないこともあるかと思います。相談を受けている人は、本人に問題点を自覚させて、行動や考え方を改めてほしいと思っているかもしれません。すぐに相手に自覚を促すことが困難な場合、まずはその人が既に自覚しており、自ら進んで問題解決を実践しようとしている事柄に着目しながら話を聴くことが効果的です。中長期的にはその人との信頼関係を確かなものとし、そこを手掛かりにしてタイミングを見計らって相手の考え方や行動の変化を促す働きかけに繋げていきます。

次の事例は部下のKさんが、課長のIさんとの定期面談で今期の問題点を振り返っている場面です。周囲のスタッフからは、業務上の連携が特に問題であるという認識はありませんでしたが、Iさんは“Kさんは疲れ気味の様子にも関わらず、顧客からの要望すべてに一人で応えようと毎日奔走している”と思い、“Kさんが頑張りすぎて体調を崩してしまわないか”と心配していました。
(今期のKさんの自己評価や、今後の課題について伺った後で)

I:「いつも一生懸命やってくれているね、ありがとう」
K:「いえ、ご指導ありがとうございます」
I:「ところで、さきほどKさんがあげてくれた今後の課題にはなかったけれど、業務の分担のことですが・・・」
K:「はい。自分なりに手分けしてやってきたつもりですが・・・」
I:「そうですか。Kさんなりに手分けしてやっているというわけですね。でも、君が頑張りすぎていないか心配しています」
K:「いえ、それは大丈夫です。それよりも先ほど申し上げた広報事業の件についてご相談したいのですが」
I:ああ、そうですね、ごめんごめん。まずはそのことについてKさんの考えをもう少し詳しく聴かせてもらえますか
K:「はい、すみません。まず、・・・以下省略」

下線部にご注目ください。Iさんは、Kさんが今後の課題としてあげていなかった業務分担のことを話題にあげ、心配な気持ちを伝えてみました。しかしKさんにはまだ自覚がないと思われましたので、IさんはKさんの認識をそのまま受け止めて尊重し(“Kさんなりに手分けしてやっている”)、自分の考えは一旦棚上げして、まずはKさんが課題と考え、自ら進んで取り組もうとしていることについて注目して話を聴くことに努めています。

日常生活の中でこれらのポイントを気に留めていただけましたら、幸いです。